「というわけです。ご理解いただけたでしょうか?」
「ええ、まぁ」
「では弊社との契約でお願いできますか?」
「はい、喜んで」
「ありがとうございます」
…秘書になってから初めてといってもいいぐらい、この人の仕事っぷりをまざまざと見せ付けられた。
社内にいる時は、常にトップにいるカレは、社員の意見を聞いているだけで、自ら交渉に行くことなんて滅多にない。
それが今日、カレの喋りの上手さ、人の心に入り込む話術。
アキラもそういう営業は得意だったけれど、かくが違うとでも言えばいいのだろうか?
正直圧倒されてしまった。
「社長、お疲れ様でした」
ホテルに戻る途中、タクシーの中でネクタイを緩めるその仕草だけでもドキっとしてしまう私は、完全に心をこの人に持っていかれているんだと、納得していた。
「ああ、すっげぇ疲れた…」
そう言って首を回す啓司さん。
「今日はゆっくり休んで下さいね?」
「それは、どうかな」
ニヤって口端をあげて笑うこの人。
何かを企んでいるって顔。
だってカレの手がわたしの太股の辺りをゆっくりと撫でている。
別にスカートの中に手を入れているわけでもなく、それでも太股の上をまさぐられると、さすがの私だって色んな所が反応してしまうわけで…
そんな私を見て、ますます嬉しそうな笑みを浮かべるドSな社長。
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