何もしないで、ただ抱きしめていてくれるこの人の優しさを、身体いっぱいに感じていた。
翌日、目が覚めた私の左手薬指には、煌びやかなダイヤの散りばめられた眩しいくらいの指輪が嵌められていた。
それを見た私は心が落ち着いていて、あんなに安心して泣いたのはいつぶりだっただろうか?
アキラと付き合ってからは、どうしても自分が強くいなきゃって気を張っていた気もする。
本当の私に気づいてってずっと思っていた。
大人ぶって強がっているだけで、本当は弱いの…って。
でも歳を重ねるごとにそれを口に出すことも出来なくなっていた。
エリちゃんとのことも、昔の私だったら絶対に許さないだろうし、とっくに別れているかもしれない。
嫌なこと無理に飲み込んで一緒になっても、後悔するだけなのかもしれないね。
「ユヅキ」
天井に手を掲げていた私を、横から抱き寄せるみたいに身を寄せてくるのは、私を甘やかしてくれてる社長。
「うん?」
「気に入った?」
「え、うん…」
「当然だろうな」
「うん」
「なんだ、素直だな今日…」
フワリと笑ったその顔は、優しくて…
今までいかにちゃんとこの人を見ていなかったのかと、ちょっとだけ残念に思った。
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