ふう〜…
大きくタメ息をついて鏡の前で笑顔を作る。
自分がこんなにも流されやすい女だなんて、知らなかった。
心はアキラって決まっているはずなのに、それを覆すようなあの社長。
時に男は、自分の女が誰かのものになることに抵抗を見せる、そんな馬鹿な生き物なんだと…。
秘書課の仕事と私がする秘書の仕事は明らかにその内容が違った。
専属秘書を今まで持ったことのないあの男が、三流の私を自分の専属秘書にしたことから、私がそうとうのやり手だと変な噂が広まっていた。
それは、どんなことをしても仕事を取りに来る…的なことも含まれているようで、ようは、社長と寝たってことで…。
そっちまでもが“やり手”の噂が水面下では広まっていたんだ。
こんなことになるのなら、アキラとのお付き合いを公表しておけばよかった…なんて、後悔先に立たず。
「どんな手使ったんだか!」
秘書課トイレでそんな言葉を浴びせられたものの、正直痛くも痒くもない。
あんなガキに何を言われたところで、何とも思いやしない。
だてに荒波にのまれてないっつーの!!
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