ワガママ1
ご飯を食べながら色んな話を聞いた。
今回の別館は東京のチーム、土田班と、私達大阪からヘルプで加勢するチーム、横山班とが中心になって作っていくってこと。
まずはホテルの中に入れるお店と施設の選別。
それから各店舗への交渉。
設計も同時進行で、完成は3年後。
なかなかのハイスピードな計画だ。
でも社長はそれだけ若手の私達に期待してくれているってことで、失敗だけは許されない。
シェアハウスに住んでる子達もみんなうちの社員だった。
「ただの寂しがり屋ですよ。1人でいたくないっていう…」
子犬岩ちゃんはしっかり目を見てニッコリ笑顔で話すから一々ドキドキするものの、イケメンに慣れていないってだけの話なんじゃないかって。
「お前、口説いてんの?こいつのこと」
一々口出すきみくんは、私の兄貴並の過保護。
もしかして、それ全部信ちゃんに頼まれてる?
29の女の心配する暇があったら結婚を考えて欲しいんだけどなぁーなんて漠然と思うわけで。
「だって、来て欲しいんだもん。男ばっかで飽きたし。ゆきみちゃん可愛いし!」
「え、私可愛い?そんなの美月にしか言われない!」
「いや俺も言うてるよ、ゆきみさん」
丸の存在を忘れていたわけじゃないけど、どうにも癒し効果の強い丸は、人間というよりはペット感覚だった。
だから抱きしめられた所でなんとも思わない。
私ってば神経が麻痺しちゃってんのかなぁ。
「調子のんな」
パコってきみくん。
信ちゃんみたいな突っ込みが入ってブーッて唇を尖らせた。
「あかんやん、女の子叩いたら!横山くん、謝ってゆきみちゃんに!」
金髪しょーたがジロって本気できみくんを睨んでいて、ちょっと優越感。
シェアハウスの住民はどうやらそうとうの優男が揃っているとみた。
私、住もうかなぁ。
美月に怒られる?
信ちゃんに怒られる?
「悪かったわ…減るもんちゃうけど…」
「一言多いよ、横山くん」
エリーがよしよしって頭を撫でてくれるから寄りかかったら「あっ…」って小さく声を漏らす。
「ドキドキするんだけど、ゆきみちゃん…」
耳元で後ろからそう言われて、背中に感じるエリーの心音がドンドンと音をたてているのが私でも分かった。
振り返ると「わぁ!チューできそうだからダメ、振り向かないで!」なんて言われて…。
なんか、可愛いんだけど、エリー!
余裕でニヤつく私を見て直ちゃんはさっきからずっと困ったような顔しかしていない。
私と目が合うと、慌てて逸らされて…―――なんだ?
「まさか住むって言わないよね?ゆきみさん…」
小さく息を吐いて直ちゃんがそう聞いたんだ。