寂しい人1



【side ゆきみ】


目が覚めたら隣にマルが寝ていた。

ズキズキ痛む額と、ムカムカする胃袋…


「二日酔い…最悪」


溜息をついてマルに背を向けた。

だだっ広いリビングの大きなソファーに直ちゃんがこっちを向いて眠っている。

あ、ここ直ちゃんの家か。

私、一人で眠れなかったんだ。

アルコールを摂取すると普段は隠している本音も出てしまうんだって。

なるべく飲まないようにしなきゃ。

信ちゃんの馬鹿。

男の家にお泊りなんてさせて。

信ちゃんのせいだ。

そうやって信五のせいにして自分を保っているなんて馬鹿げた話、美月にも誰にも言えない。


「ゆきみさん、起きてる?」


不意にマルの声が後ろからして。

気づくと、ふわりとマルの温もりに包まれている。

ペットみたいなマルに抱きしめられた所で何の感情も生まれない。

そもそもこの子はこういう子で…


「今起きた」

「大丈夫?二日酔い…」

「気持ち悪くて動きたくない…」

「せやろな。村さん俺んとこ連絡入ってな。昨日既読スルーしてたやろ、ゆきみさん」

「…覚えてないよ」

「すまん言うといて!って…」

「自分で言いに来いっつーの」


ムスっとしてマルの方を振り返ると、至近距離でマルと目が合う。

寝起きのマルは顔がパンパンに腫れていて余計に動物っぽい。


「あかんよ、先輩の女に手出されへんわ」

「何もする気ないんだけど」

「え?今ちゅーしたかったんちゃうの?」

「何を根拠に?するわけないでしょ?」

「あかん今本気で覚悟決めたんに。ええよって。村さんに内緒で…」


マルのいいとこ。

こうやって寂しさも紛らわせてくれる優しい奴。


「…傍にいてくれる人がいたら乗り換えようかな、私…」


ギュってわざとマルに抱きつくと、腰を引いて苦笑い。

だからもっと大げさに抱きついてみると「それはあかんってほんま…」苦し紛れなマルの逃げ腰が可笑しくてそのまま上に乗っかって組み伏せた瞬間、「何してんのっ!」直ちゃんが私を抱き抱えたんだ。



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