秘密の約束1


「うー。あー。ハァ…」

「なんやねん、さっきからずっと溜息つきやがって…兄貴となんかあったんか?今朝もなんや様子おかしかったし、兄貴も…」



白衣の銀眼鏡な健二郎さんにお弁当を届けに来たものの、どうにも溜息が止まらない。



「お弁当私もここで食べてもいいですか?」

「かまへんけど…」

「健二郎さん、好きです!」



ゲホゲホゲホって、健二郎さんが咳き込んだ。

真っ赤な顔で鼻の頭の眼鏡をクイッとあげる。



「なんやねん急に!」

「言いたくなっただけですー。健二郎さん好き好き好き好き…」

「あーもう、ええ、いらんわそーいうの」



プイッてするけど、本当は優しい人だって分かっちゃったからいくら突き放しても無駄ですよー。

内心そう思いながらも免疫がないのか、本当に興味がないのか、健二郎さんは見ていて飽きない。

隆二さんはいつキスされるかのドキドキ感があって。

キスされたらされたで別にいいやぐらいの気持ちの私は恋愛に向いていないのだろうか。

直人さんは…「ハァッ…」テーブルに横たわる私の髪に、そっと健二郎さんの手が触れた。



「まぁそう落ち込むなや」



ほらね、やっぱり優しい。



「健二郎さんあの、似てますか?私と直人さんの元カノって…」

「あ?」

「似てるんですか?」

「なんやそれ、全く似てへんわ。お前のがずっとかわ…」



そこまで言って言葉を止めた健二郎さんは、眼鏡をクイクイ直す。

ジーッと見つめると顔はどんどん紅くなっていって。




「かわ?かわいい?私のが可愛い?」

「いや、ちゃう!そんなん言うてへん。勝手に自惚れんな、あほう」



頭の手をポカッとされる。



「えー可愛いって言って?そしたら元気出しますから!」



私の言葉にギョッと目を大きく見開いた健二郎さん。

ゴホンって何故か咳払いをして、思いっきり顔を逸らして小さく呟いたんだ。




「お前のが、か、可愛ええわ」

「ほんと?」

「おう」

「わーい!じゃあ私もうちょっと頑張ります!」



立ち上がってお弁当を持つと健二郎さんに頭を下げる。



「健二郎さん、今夜は何食べたいですか?」

「え?ああ、そうやな。さっぱりしたんがええかな」

「お魚好きですか?」

「おん、好きやで」

「了解でーす!」



敬礼のポーズをとった私は、もう一度健二郎さんに頭を下げて隆二さんと直人さんのいる海へと歩き出した。







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