▼ 彼の本気1



オミさん、どこにいるの?

学校を飛び出して色んな場所を探した。

昨日のオミさんを思い出して涙がこみ上げる。

タクシーで倉庫に行った。

奥の部屋に入ると、思った通り哲也がそこにいた。



「樹里亜どうした?」



至って涼しい顔の哲也を私はジロリと睨みつけた。

どうした?じゃない。

絶対に、哲也の耳に入ってるはずだ。



「てっちゃん酷い!オミさんどこに隠したの?教えてよっ!」

「は?なんのこと?」



キョトンとした顔の哲也。

そのポーカーフェイスには騙されないんだから。



「直ちゃんが雷翔の幹部ぶん殴っちゃったよ!やり合うの?雷翔と…。そういう決まり、なんでしょ?」

「こっちの事に口出すなよ、樹里亜…」



白目向きそうなくらいド低いドスの聞いた声で言われて怯みそうになった。

つーか、実の妹相手にガン飛ばすかな…



「兄貴が教えてくれないなら死ぬ気で探すからいいっ!」

「待てよ、行かせねぇ」



……―――え?

哲也の片手が私の身体全部の動きを止めた。

なに?

手首掴まれてるだけなのに動けないんだけど。



「えちょっと、離してよ」

「兄貴じゃなくててっちゃんって呼べって言ってんだろ?お兄ちゃんの言うことは聞けって何度も言ってんだろ?」



口端を緩めて私を見下ろす哲也に若干の恐怖を感じる。

一歩近づく哲也はめちゃくちゃ私をガン見状態で…

でもオミさんが絡んでいる以上絶対に引かない。

怖くたって負けないんだから!



「オミさんどこよ、兄貴!」

「樹里亜貴様、どうなるか分かって言ってんのか?あ?」



顎を掴まれて壁に追い込まれる。

さすがは族の頭…何ともいえないオーラをまとっていて…



「ズルイよ兄貴!オミさん出してよ!」

「出すわけねぇだろ。頭冷やせクソったれ!」



私を離した兄貴はダンっと黒いソファーを蹴り飛ばして部屋から出て行った。

やっぱり兄貴がオミさん隠してんじゃんっ!

悔しい、どこにいるの?

こうなったら…って、チームの人に片っ端から声をかけた。


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