■ 大事なもの1


【side ゆきみ】




繋がれた腕から伝わる温もりに



涙が零れる…



あなたの未来に、わたしはいる?



――――――――――――――





バイクの後ろに乗せられたわたしは、無言のままただ哲也の後ろにいるだけ。


哲也は家に帰るだけなのにグルグル遠回りをしている。


早くわたしを帰して欲しい。


聖なる夜だから、街のイルミネーションがキラキラとライトアップされていて、そんな事すらわたしには目障りで、うざったい。


こんな気持ちじゃなきゃ、幸せいっぱいで見れたと思うと、自分の運の無さに悲しくなる。


黙っていると嫌な事ばかりが脳内を支配してきて、気持ちはどんどん落ちていく。


奈々がくれた『うちにおいで』って言葉が嬉しかった。


奈々の家に行ってガールズトークして…


それも思い浮かべたし、それを望んだけれど、それはわたしにとって¨逃げ¨なのかもしれない。


哲也の気持ちと向き合うのが怖い、わたしの¨逃げ¨なのかもしれない。


わたしは哲也の腰に回した腕を解いて、トントン…と哲也の腹筋を叩いた。


それを合図にスピードを落とした哲也はゆっくりと並木道に入る。


春は桜満開のその道は、季節を変えた今、両サイドの桜の木には色とりどりの電飾がつけられていて、まるで光の道のよう。


ゆっくりとそこを走る哲也のバイクは、並木道を抜けた先にある大きな公園でエンジンを止めた。



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