■ スレチガイ1
【side ゆきみ】
泣いても泣いても
涙は枯れない…
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どのくらい時間が経ったのかも分からない。
せっかくのクリスマスイヴが、こんな最悪な日になるなんて、誰も思っていなかっただろうな。
わたしだってそう。
占領していたトイレから出ると青倉庫はシーンとしている。
人の気配もなかった。
わたしが歩く足音がコツコツと響いているだけで。
でもまだ外の明かりがついているから、きっと誰かはいるんだって。
できるのなら、哲也はいないで欲しい…
そう願うわたしの心はものの見事に裏切られて、広場まで行くと哲也の後ろ姿が目に入った。
クソ寒いのに、サラシに学ランを着ただけの哲也が、外にあるソファーに座って煙草を吸っていた。
あんなに沢山泣いたと思っていたのに、わたしの目からはまだ涙が流れるらしい。
その哲也の後ろ姿がボヤけていく。
ダメだ、やっぱり哲也の顔が見れない。
これ以上惨めな想いは御免だよ。
わたしは静かに方向を変える。
足音を絶対に立てないように独りでバーに向かったんだ。
「………」