■ 着信1



見えない真実は



どこまでも闇の中…




―――――――――――――――




『ゆきみ〜…』



携帯を握りしめてあたしは小さく溜息をついた。


お正月の三が日を過ぎても、青倉庫にはあまり人が戻ってこなくて。


あたしは完全に暇を持て余していた。


毎日ケンチが側にいてくれるけど、他のみんなはほとんど顔を出さなくて。


直人、何してんだろー?


とか、そんな質問を一人脳内で繰り返すだけで。



『ケンチ、暇じゃない?』


「………」



ここ数日ずっとそう。


何か考え事してるような仕草ばかり。


聞いても答えないっていうか、「なんでもねー」って言われるだけで。


あたしはケンチの腕を掴んで大きく揺らした。



「奈々?」



目をパチクリさせてあたしを見下ろすケンチをジーッと見つめた。



「ん?」


『何考えてたの?ずーっと難しい顔してるよ、ケンチ』



あたしの言葉にやっぱりな苦笑いを返すけど…



「なんでもねー」



ほらね、思った通り。


こうなってやっと分かったのは、タカヒロが側にいないことに腹を立てていたノリの気持ちだなんて…


あたしにはケンチがいてくれてるから、退屈なんてしないけど、


側にタカヒロやゆきみがいない空間は寂しい。


いつもならゆきみと哲也くんが連ドラのDVDを見ていて、それを後ろからタカヒロがチャチャ入れて…


「タカヒロうるせぇよ!」って哲也くんが怒って。


それにあたしもゆきみも笑って。


そんな当たり前な生活がないだけで、あたしはこんなにも寂しく思ってしまう。



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