■ 秘めた独占欲1






足掻いて足掻いて




疲れてしまったのかもしれない




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大晦日。

年末の大きな暴走。


今年最後の暴走が始まろうとしていた。


これでもか?ってくらいに青倉庫いっぱいにいるチームの子と、配下の何チームかの子達が、逸る気持ちを抑え切れずにバイク音を響かせている。


地響きのするようなこの騒音も、完全に慣れきっていた。


VIPの中は煙草の煙りで充満していて、あたしはほんの少しだけ居心地が悪くてこっそりドアを開けて出て行こうとする。


カチャッとドアノブを回すと、「奈々?どうした?」すぐにタカヒロの声が飛んできた。


その一声にシーンとなって、各チームの総長さん達があたしに視線を向けているのが分かる。



『ト、トイレ』


「そこまで行くよ」



手前にいたケンチが止まったあたしの手を誘導するようにドアノブを回してくれた。


ケンチに背中を軽く押されてVIP部屋から出ると、小さく溜息をついた。


あの部屋にいないのは、ゆきみと直人。



今日も来ないゆきみを迎えに行った直人はまだ戻ってなくて。


久しく見ていないゆきみの顔を思い浮かべた。


クリスマスの後から少し様子がおかしくて、それはあの路地裏の事件の日に崩壊というか、なんていうか。


ゆきみの異変に気づいていながら何もしてあげられていない自分自身が歯痒くて。



『哲也くんは、おかしくない?』



隣を歩くケンチにそう聞いたら、キョトンとした顔を返すケンチ。


特攻服姿のケンチは単純にかっこよくて。


ほんの少しドキドキする。



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