■ 闇の扉1
【side 奈々】
水面下の現実がもうそこまで迫っていた事にさえ
気づけないなんて…
―――――――――――――――――
TSUTAYAから出てすぐにある大きな繁華街の路地裏、別にそこを通ったのはいつもの事で。
夜は柄が悪いからあまり通りはしないけど、まだお昼前で辺りは明るい。
何の迷いもなくその細い道を通っていたあたし達は、真ん中ぐらいまで来た所でふと足を止めた。
『直人あれ、人…?』
あたしとゆきみの後ろを歩く直人に振り返ってそう声をかけた。
第六感というか、何なのか。
妙な胸騒ぎがした。
一瞬にして鋭い目つきに代わる直人に、心臓がバクバク鳴る。
ゆきみの手をギュッと強く握りしめた。
「二人は来ちゃダメだ。…ケンチさんに電話して下さい、奈々さん」
『…う、うん』
そう言う直人の顔は真剣で、あたしはすぐに携帯を取り出してケンチに電話をかけた。