■ 心奪1
あたしを守ると言ったタカヒロの言葉
あたしはただ、それを信じている…
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12月28日。
その日の朝も、快晴だった。
青倉庫の朝は早い。
「タカヒロさん分かりました」
血相変えてVIPに入って来たケンチは、何をそんなに慌てているのか、あたしの顔を見て吃驚したように一歩後退りした。
ヤベェ…って顔丸だしのケンチは、乱れた呼吸を整えるべく、大きく深呼吸を繰り返す。
あたしの肩に回っていたタカヒロの手が優しく髪を撫でる。
『何が分かったの〜?』
手前のソファーで連ドラのDVDを見ていたゆきみが振り返ってケンチにそう聞くと、苦笑いを返すだけで。
隣に座る哲也くんの腕を引っ張ってケンチの言葉の続きを促(うなが)すよう。
「ゆきみ、これの続き借りてきて」
TSUTAYAの袋を揺らしてそう言う哲也くんの言葉に、不機嫌丸だしのゆきみ。
ケンチの行動が怪し過ぎて、それくらいゆきみやあたしでも一目瞭然で。
あたし達を追い出して水面下の話をするんだって。
でも、それはあたしやゆきみに心配かけたくないからで。
そうするタカヒロや哲也くんの気持ちを理解してあげた方がいいのかもしれなくて。
全てを知ってしまったら、今みたいに何も知らない顔で笑えなくなるのかもしれなくて。
話して貰えないのは淋しくもあるけど、それが守り方なんだって。