浮気男。
「聞いてよ店長!!アイツ、白昼堂々浮気してんの、信じらんないっ!帰ってきても絶対ヤらせてやんないんだからっ!」
ダンっと思いっきりカクテルをテーブルに叩きつけた。
ムカムカムカムカする。
今日ほどSNSが嫌いになったことなんてない。
わりとそーいうのは好きで、わたしも自撮り写真を載せたりしているわけで。
可愛いものだったり、綺麗な景色だったり、美味しいご飯だったり、頭の中ではうすれてしまう記憶もこのInstagramって奴はしっかりと保存しておいてくれる。
イイねってして貰うと嬉しいし、コメント入るともっと嬉しいし。
だけど。
「白昼堂々?」
ここMOAIはわたし達の行き付けのbarで。
店長の黒木さんはなかなかのイケメン。
専らわたしはタイプではないけれど。
いつも美味しい料理とお酒を提供してくれて、料理が得意ではないわたしはほぼ毎日黒木さんの手料理を食べていた。
「そうこれ、見て!」
スマホの画面を見せる。
つぶらな目でそれを覗き込む黒木さん。
身長180越えの大きな身体をわたしに寄せて小さなスマホを見つめた。
「直っさんだね。え、浮気?」
「うんだって、女に囲まれてる…」
「えっこれ、仕事じゃないの?」
「そもそも海外行ってること聞いてないのよ、わたし。それなのに女とインスタあげてるなんてマジで有り得ない。絶対にえっちさせてやんないんだから!」
別にたいしたことじゃないのかもしれない。
だけど仕事で海外行くのって結構重要じゃない?
それなのにアイツ、一言もわたしに言わずに飛びやがって。
ムカついたからコメント入れてやるんだから。
【白昼堂々浮気とはいい度胸だ!隆二と浮気してやる!フンッ!】
そう書き込んでわたしはスマホの電源を切った。
いつ帰ってくるのかも知らないし、先に浮気したそっちが悪いんだから。
「りゅーじぃー。今日うち泊まって?」
猫なで声で元セフレの隆二の腕を引っ張ると「マジで?いいの?直人さん帰ってこない?」なんて目の色変えてわたしを受け入れてくれる。
なんだかんだで隆二はわたしを今でも愛してるんだってのが正直な所。
「ゆきみー。直人くん今頃全力疾走してるかもよ?」
相変わらず岩ちゃんの肩に腕をかけているえみはやんわりとそう言ってくれる。
これでもえみが心配してくれているのは分かってる。
「いいの、頭冷やせってんだ!あの仕事人間め!りゅーじ送ってね?」
腰に腕をかけて下からユラユラしながら見つめあげると、チュッて不意打ちな隆二からのキス。
「もちろんだよ、ゆきみさん。めちゃくちゃ愛してあげる」
ふわりと隆二が抱きしめてくれた。
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