思わぬ客人。
三代目のツアー再追加公演である名古屋ドーム3日間を出し切って東京に帰ってきた俺達。
ゆきみと順調に付き合い始めた俺は、ライブが終わった瞬間ゆきみへの逢いたさが馬鹿みたいに募ったなんて。
「直人さん飯どうっすか?」
車の中で直己に声をかけられて苦笑い。
そんな俺を見て「あ、予定ありましたか?岩ちゃん誘ってみますね。」…できる弟はすげぇ。
俺一言も発してないけど顔色だけで心を読めるのは直己ぐらいだと思う。
「いやたいした事じゃないんだけどね。また飯行こうな。」
別に約束している訳じゃない。
そもそもゆきみだって今日も仕事に違いねぇし。なんなら俺より忙しいかもしれないし。
ただこうしてオフが貰えたし、せっかくのバレンタインだから逢いたいって思うのは普通の感情だよなって。
こーいう時に思う。
―――マジでゆきみのこと好きなんだって。
他の何を差し置いても優先したいと思えるなんて。
とりあえず家に着いたらゆきみにLINEしてみようってスマホをポケットに閉まったまま俺は目を閉じて車が家につくのを待った。
「は…?」
あれ俺電気つけっぱで行った?
部屋の電気がついててリビングのドアを開けた瞬間、ふわりとゆきみの香りが漂ってきた。
ソファーの上で膝を抱えて蹲って寝ているゆきみ。
テーブルの上には手作りらしきチョコレート。
作ったのかな、この部屋で。
キッチンは若干汚れていて。けど暖かいこの部屋にテンションがあがった。
やべ。家に帰ってゆきみがいるのがこんなにも幸せだなんて。
一緒に住みたくなるじゃねぇか、このやろ。
ソファーで寝ているゆきみに寝室からブランケットを持ってきてかけてあげるとパチっと目を開けた。
「ダーリン!!おかえりなさい!!」
ガバリと俺に抱きつくゆきみ。
「来てたんだ、ただいま、ゆきみ。こっち向いて、キスさせて…」
「んーダーリン。」
目を閉じるゆきみにチュッと小さくキスを落とす。
まぁこれで満たされるような女じゃないだろうけど。けどそれが楽しくてあえて触れるだけのキスで終わらせた。
案の定、俺を見て不満気な顔。
ぷうって頬を膨らませて「もっとちゃんとして!!」そう言うが、俺の首に腕を絡めて引き寄せた。
ゆきみからの愛情たっぷりな濃厚なキス。
俺とのキスが大好きだっていうゆきみ。そんなゆきみに結局溺れてんのは俺の方だって。
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