リングサイズ。


「あ、これ素敵…」

「どれ?これ?」

「はい…」




BVLGARIの店内でアクセサリーを物色中の私達。

今日は大好きな大輔先輩のお誕生日。

年に一度、生まれてきてくれたことを盛大にお祝いする大切な日。


特に欲のない大輔先輩だから「ゆきみちゃんが傍にいてくれればそれでいいよ」なんて私を甘やかすけど、私だって大輔先輩の喜ぶ顔がめちゃくちゃ見たいわけで。

先日、直人くんにBVLGARIの婚約指輪を貰ってめちゃくちゃ喜んでいたユキミが目に浮かんで、何となく大輔先輩とBVLGARIにきちゃったんだけど。

私が指差したものは、専らそれ系の指輪で。

大輔先輩の為の買い物なのに…




「先輩、違う、それじゃない!」

「え?違った?でもこれ可愛いからちょっと見てみようよ。ゆきみちゃんに似合いそうだし」



慌てて言ったものの、スッと手をあげて店員を呼びつけて「これ見せてください」って言うんだ。




「直人とユキミちゃんに感化されてる?俺はいいきっかけができて嬉しいけど」




顔をあげると、優しく微笑んでいる大輔先輩に、キュンと胸がトキめく。

いい歳して、こんなにも胸がキュンとするのなんて、大輔先輩だけよ。

店員さんがサイズリングを持っていて先輩がそれをチラリと見る。




「あ、それそれ、そのサイズで」




特に教えたことはないのに私のサイズを難なく選び当てた大輔先輩。

思わずキョトンと見つめる私の頬を指でツンって突かれて、耳元で私だけに聞こえるように囁いたんだ。




「キスしたいの?」




ハッと我に返ってブンブン首を横に振る。

カアーって身体の中の血が顔に向って流れてくるのが分かった。

ええ、したいです!なんて思ってはいるけどさすがにここじゃTPOもなにもないって。




「今は我慢します」

「はは、我慢しなくてもいいのに!」




ポンポンって大輔先輩が優しく背中を叩いた。



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