■ 謹慎の理由1
【side ゆきみ】
『ケンチ、直人は?』
「謹慎だって」
GW突入って事で昼間から青倉庫に集まるoneの面々の中、直人が見つけられなくて外でバイクを弄ってるケンチに聞いた。
地べたに胡坐(あぐら)をかいてガチャガチャ機械を弄っていたケンチは、わたしの質問に顔を上げると真っ白い歯を覗かせて笑った。
昨日の雨はあがっていて、空はカラっと晴れているというのに。
直人の笑顔がないと、どうしても気分が落ちる。
そう思うと、わたしは直人を癒していた気でいたけど…
実際は、直人の存在がわたしを癒していたのかもしれない。
ケンチの言葉にキョトンと視線を落とすわたしは、その顔通りのマヌケな声を出す。
『謹慎?は?どこを?』
「どこって、ここしかねぇって」
『意味わかんない』って顔で眉間にシワを寄せたわたしに、ケンチが「ぶはっ」って吹き出した。
ガチャンって機械を地べたに落とすと、お腹を抱えるケンチ。
『…どういう意味?なぜ笑う?』
「ごめっ!謹慎の訳はゆきみちゃんがよく分かってるんじゃねぇ?って俺思うんだけど…」
ますます意味が分からない事を口走るケンチをガン見したわたしの後ろ、怠そうに歩いてくる哲也が視界に入った。
「ケンチ、ゆきみTSUTAYA連れてけ!何かDVD借りてこいよ」
振り返ると真後ろに哲也がいて、わたしにTSUTAYAのカードを差し出している。
とりあえずカードを受け取るわたし。
『哲也、直人は?』
「ん?」
『謹慎ってなに?』
わたしの言葉にケンチを超睨む哲也。
だからわたしの後ろでケンチがビクッと肩を揺らした。
その顔は一瞬で青ざめるっていうのか。
睨む哲也から慌てて身体ごと逸らすケンチ。
「てめぇ、余計な事を」
わたしを退かしてケンチの方に進む哲也の腕を捕まえて、その腕にすっぽりくるまる。
片手でわたしを抱きしめてる状態の哲也。
殴りはしないだろうけど、微かに殺気のようなオーラを放出させている哲也は、腕に巻き付くわたしをそっと見下ろした。