■ コイバナ1
あたしがゆきみと同じoneの一員だって噂が学園内に飛び交うのと同時に、噂は噂を重ねて年下の彼氏がいるって流れていた。
それは勿論ながら毎日迎えに来るケンチの事であって。
それを否定も肯定もしないあたし。
タカヒロのことを言えないあたしは、みんなにはケンチが彼氏でもいい…ってくらいは思っているのかもしれない。
『あ、来週ケンチの誕生日だよ?』
6時間目が自習のあたし達。
ゆきみの哲也くんは、相変わらず窓際の真ん中の席でグランドに顔を向けて寝ている。
あたし達は、席を移動して話していた。
『え、そうなの?』
『うん、そう!彼氏(笑)』
そう言いながらゆきみはクスクス笑っていて…ちょっとだけからかわれている気分になった。
完璧に噂に乗っかって楽しんでいるように見える。
『ゆきみまで言う?』
『ごめん、ごめん!みんな羨ましいんだよ。ほらケンチって背高いし顔が美形だから目立つんだよね。声もデカイし煩いけど…あの子モテるって直人が言ってた』
紙カップのミルクティーをチュルルル〜って吸いながらゆきみが笑う。
『絶対哲也くんのがモテると思うけど…ゆきみのが羨ましがられてると思う…』
視線は三つ前の席の哲也くんで。
規則正しく肩を上下に揺らして眠っている。
だからあたしは聞いてみようと思う…
ゆきみにとってのNGワードかもしれないそのことを…
『あのさ、この前…何かあった?』
『え?』
『うん、ほら…直人と二人でVIPに行ったとき…』
ドキドキしながらそう言ったあたしは、やっぱりゆきみの顔が見れなくてまだ俯いたまま。
何も言ってくれないかもしれないなって、そう思っていたあたしに、ゆきみは『ごめん』てポツリと呟いた。
顔を上げたあたしの前にいるゆきみの視線は、眠る哲也くんに向いていて、その瞳は果てしなく切なかった。
『言いたくないならいいよ』
そう言おうとしたあたしにゆきみは振り返って又笑う。
観念したような諦めたような自嘲的な笑いを浮かべて。