■ 皺寄せ1



耳をつんざくような爆音

きらびやかで色とりどりのテイルランプ

哲也…

行かないで…


―――――――――…


自分の身は自分で守れ!

そう散々いわれてるのにも関わらず結局又、哲也はレースの道を逸れて行く。

先頭を走っているはずの哲也のバイク音が近づいて、遠くなる。

ケンチの後ろにいるわたしをほんの一瞬見て、皺寄せのケリをつけに一人向かった。


止めてよ、ケンチ…

止めてよ、タカヒロ…

全力で引き止めてよ、ノリ…

それが出来ないなら哲也を走らせないで。


そんな事言えなくて、わたしはただケンチにしがみつくだけ。

わたしの手に力が入ると、決まってケンチはスピードをあげてくれる。

ケンチなりにわたしの不安を消し去ってくれてんのかもしれない。

哲也の無事を願うのはわたしだけじゃない。

チームoneには哲也はなくてはならない存在。

欠ける事も、去る事も許されない。


街道を走るわたしはテイルランプも爆音も気にならなくて。

タカヒロの乗っている暴走車を囲むようにバイク達が音を奏でていて、それでもわたしの頭の中は哲也だけ。

哲也の無事を祈るだけ。


昔っから喧嘩ばっかだった哲也は、チームの中でも強いって言われていて。

バイクの走りも速いし、だから特攻隊長に抜擢されたんだ。

でもそんなの全然嬉しくなかった。

そう思うのは、わたしだけ。

きっとわたしだけ…


「ケンチ!ゆきみ下ろしてお前哲也の応援行け」


不意に聞こえたタカヒロの声。

ハッとして横を見ると暴走車の後部座席の窓からタカヒロがそう叫んで。

見るからにタカヒロの顔は険しくて、ノリに甘えるような、わたしを¨ちゃん¨づけで呼ぶようなそんな雰囲気は微塵(みじん)もなかった。

タカヒロの低い声と表情にわたしは又心が壊れそうで砕けそうで…


「はいっ」


そう返事するとケンチは街道からひっそり逸れた。

後ろにはピッタリと後輩の直人が着いて来ていて。

ケンチの後ろから下りたわたしを乗せる為に存在する直人。

すぐに止まったバイクからわたしは半ば無理矢理下ろされた。



- 13 -

prev / next

[TOP]