■ 幼馴染み1


その日から、わたしは奈々と同じ時を過ごす事が増えた。

同じクラスという事は勿論、わたし達は初めて出来た友達として沢山の話しをした。

それはまるで…昔から仲が良かったようなそんな気分にさえなる。

あれから奈々に文句を言ってくる女子達もいなくなって、いたって平和な日々を過ごしていた。


哲也達は週末の夜には必ず走りに行く。

そしてそれにわたしは必ず着いて行く。

奈々を走りに誘った事はないけど、そんな所に奈々を連れて行く事もできればしたくなかった。

いつどこで危険が待ち構えているか分からないから。

奈々をチームに入れる気もないし、奈々もそれを望んでいる訳もないだろうし。


「今日行く?」


振り返ると、白い大きなヘアバンドを頭いっぱいに巻いた哲也が、ゲータレード片手にわたしの机に乗っかっていた。

赤い短髪の下の輪っかピアスを揺らしてわたしを覗き込んでくる。


『うん、行く』

「了解!最近あの子と仲良いいな、ゆきみ楽しそう」


視線を一瞬奈々へ飛ばしてから、フワッとわたしの髪に触れる哲也の手…

なに…?

こんな事されたの初めてなんだけど。

髪の毛なんて触った事ないよね…?

わたしは哲也のその行動の意味が分からないながらも、ただ鼓動が速まって哲也を見つめる事しか出来ずにいる。


「妬ける」


口端をほんの少し緩めてそう言う哲也は、わたしから目を逸らすこともなく。

な、何言ってるの?


『え、哲也?』


どうしていいか分からなくて。

無意識な半笑いのわたしは、近づく哲也にちょっと後退りすらしていて。

それでも今この展開を楽しんでいるようにも感じて、意外と冷静な自分にちょっとビックリしていたり…


「ゆきみは俺のもんだろ?」


キョトンとするわたしの唇にそっと親指が添えられて…

途端に爆発しそうなくらいに、わたしの心臓が音を立てた。

そんなの、生まれた時から哲也一筋だよ。

でもね…


『哲也?みんな見てるよ…』


わたしの言葉にクラスを見回す哲也。

みんな慌ててわたし達から視線を逸らすのが分かった。



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