測れない好き1




――俺がゆきみを幸せにする。


なんて宣言したものの、その実態が何か変わることなんてない。

あの日から早一週間が過ぎた今日、高校生活最後の夏休みに突入した。


分かっていなかったんだ、この夏休みがゆきみと哲也にとってどれほど大切なものだったのか。




「ねぇお兄ちゃん。夏休みさ…彼氏の家に泊まりに行っちゃダメ?」



突然美月からそんな質問。

は?ダメに決まってるでしょ!

そう言いたいけど、即否定するのも少し可哀想な気がして。

大事な妹に手だすならそれなりの覚悟を見てみたいもんだ。



「…連れてこいよ、うちに」

「え?」

「彼氏。俺とゆきみと哲也で見極めるから。3人共OKだったら一泊だけ許す!」

「え、え、え!ありがとう!!」



ガバって美月が俺に抱きつく。

専ら俺はOKなんて出すつもりもクソもないけど。

久々に美月の温もりを感じて思い出す、ゆきみの温もりを。



「お兄ちゃんは?ゆきみさんとどうなった?」

「どうってなに?」

「好きって伝えたんでしょ?その後、どうなってる?」

「ああ、別になにも変わってねぇよ。今も哲也と付き合ってるし…」



シレっと答えると美月がとんでもない顔で俺を見ている。

え、なに?怖い…

我が妹ながらそんな怖い顔しちゃうわけ?

なんでよ?



「なんだよ…」

「何ボサっとしてんの!?まさか告白して終わりとか思ってないよね?後は気持ちの問題とか…」

「え?」



俺がすることってそもそもある?

俺がゆきみを好きなことをゆきみ本人に伝わったことで満足しかけていた俺に美月の一言がグサっと突き刺さったんだ。



「いいの?てっちゃんとヤっちゃっても…。お兄ちゃん達もう18でしょ?初カレ、初キス、初エッチの三拍子揃ってるんだよ、ゆきみさん!絶対ヤっちゃうって、てっちゃん。ほおっておくわけないよ!てっちゃんはずーっと小さい頃からずーっとゆきみさんのこと好きだったの。やっと両想いになれたんだからエッチしないわけないでしょ!!もたもたしてたら抱かれちゃうよ!?早くゆきみさんにアクション起こさないと!!」



こいつ、マジで俺の妹なの?

つーか、女なんだな美月も…。



「けどどうしたらいいか…」

「馬鹿!何回も好きって言って、ゆきみさんの喜ぶこと片っ端から叶えてあげなって!時には強引に!時にはあっさり引いて…これぞ、恋のかけひき!女はそれに弱い生き物である!」



力説する美月の言葉を一語一句逃さないように聞いていた。

ゆきみの喜ぶことってなんだろ?

ずっと小さい頃から一緒にいたってのに、俺はゆきみがどんなことをしたら喜ぶのかなんて当たり前に分かってなかったんだ。

そして勿論ながら、ずっとゆきみを見てきた哲也には、それがそう手に取るように分かっていたんだと思う。



―――恋は一秒たりとも待っててくれない。




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