理想のカップル1
「直人さん肌綺麗ですね〜。ゆきみの言う通り…」
「え、マジ?メイクさんに言われると自信出ちゃうんだけど俺!」
「俺」って言いながら大袈裟に両手で自分の顔を指差す直人さん。
その顔は得意のドヤ顔。
俺らん中…というよりは、ファンの方が直人さんはドヤ顔が多い…ってよく言ってるみたいで。
確かによく見るその顔。
自信に満ちた直人さんの顔は男から見ても普通にかっこいい。
「お茶目だなぁ、直人さんほんと。ゆきみのドストライクですよ!タイプっていうかなんていうか…」
「え、ちょっと待って!俺以外にタイプなんてあんの?アイツ!!てか奈々ちゃんってもしや、歴代のゆきみの男知っちゃってる系?」
つぶらな瞳をガっとかっぴろげて直人さんがメイクの行沢さんに近づいてそんな質問。
学生のころからの友達っつったらほぼ知ってるんだろうな〜って思いながら二人の会話に耳を傾ける俺。
「あはははは、まぁ…。色々と…―――」
「それ全部言って!俺よりイケメンいた?」
「ぶっ!」
笑ったのは岩ちゃんで。
スッと直人さんの肩に手を添えると、ちょっとだけ生意気な顔でこう続けた。
「直人さん、絶対いますから!」
まるで自分が見てきたようなその言い方に、少なからず嫌味が込められているんだろうか…。
全くと言っていいほどゆきみさんに相手にされなかった岩ちゃん。
この男前が、一度も。
そりゃ屈辱だよなぁたぶん。
まぁ直人さんがいい男だってことに違いはないけど。
「うおおおおおおおおいいいっ!何言うてんねん岩田!」
そう言ったわりに落ち込んだように行沢さんを見つめる直人さん。
「いないって言って」ってその顔に書いてある。
ドデカク、ふとぶとと…。
「高校の時は小さくて可愛らしいヤンキーと付き合ってました。ゆきみのべた惚れで…」
「マジッ!?ゆきみちゃんヤンキー好きなんだ!」
言いながら岩ちゃんの視線は俺を捕らえていて。
いや若気の至りはお前も一緒だろ!って思いながら「なに、岩ちゃん!?」そう突っ込んだ。
「いえ、じゃあ臣さんもタイプなのかな?って」
「俺小さくねぇけど…そこは直人さんストライクなんじゃないですか?」
「あ、ほんとだ!」
「待て待て待て!お前ら!」
ガンっと立ちあがって直人さんが俺と岩ちゃんを交互に睨む。
まぁそうだよな。
「あでも。ぶっちゃけ小さい人が好きです、ゆきみ。小さくて可愛い人…ね、直人さんドストライクでしょ!」
ニコって行沢さんが笑う。
その笑顔を見て分かる。
マジでゆきみさんと仲がいいってことが。
行沢さんを見てると地元のダチに会いたくなる。