涙の懺悔1
【side 広臣】
奈々のお陰で何とか生放送を乗り切った俺。
そのまま直人さんの家に移動してメンバー会議が行われた。
その最中、奈々とゆきみさんが揃って外に出て行った。
何度も奈々の携帯にある着信に気づかないわけがなく、奈々が気になって全くメンバーの声が耳に、脳に入ってこない。
そんな俺を見かねた直人さんが困ったように眉毛を下げた。
「広臣、おーい広臣!」
「……え?あ、はい」
「お前な、全く聞いてねぇじゃないかよ?」
「すいません、あの…」
「ちゃんと戻ってくるから、今は集中しろよ。俺臣はもっとしっかりしてると思ってたけど、女絡むとめっぽう弱くなるんだな」
馬鹿にされてる訳じゃないけど、直人さんに見透かされてめちゃくちゃ恥ずかしい。
「まぁ、それだけマジってことか」
そう言った声は優しくて、やっぱり最終的には直人さんに頼っている自分がいるんだって思う。
これから俺は、俺と奈々はどうなるんだろうか?
「すいません。集中します!」
「いやもういいよ。生放送乗り切っただけでも褒めてやるって、今日はさ」
ドラ焼き口で笑う直人さんのスマホがブーっと鳴る。
スライドして着信をとった直人さん。
微かに聞こえる女の声はゆきみさんだと思う。
「あー分かった。とりあえずかけ直すからちょっと待ってろ!」
電話を切ると真っ先に俺を見つめる直人さん。
な、に?
「広臣さ、聞くけど。奈々ちゃんのこと本気なんだよね?本気で奈々ちゃんと付き合いたいって思ってんだよね?」
メンバー全員いる前でそう聞く直人さん。
俺にはもう何も隠すことはないし。
例え隆二が「ちょっと待った!」って言っても俺の奈々を想う気持ちは変わらない。
直人さんが真剣だからか、誰も何も言わない。
静かに俺の言葉を待っている。
隆二ごめん、俺本気なの。
「はい、迷いはありません。本気で惚れてます」
「そっか、分かった。これから奈々ちゃんが彼氏と会うことになった。広臣の為に別れ話するって。お前どーする?」
「え、……行きます」
グルグルと色んな感情が脳内を回っている。
彼氏がいた事実と、俺の為に別れ話を切り出す奈々。
その先に俺と奈々の未来があると信じていいんだよな。
チラリと隆二を見ると、微笑ましく俺を見ていて。
「臣ごめん、俺全部知ってた。奈々が臣に本気にならないようにって、邪魔するフリをしてたのずっと。ゆきみさんに頼まれて…。でも二人共本気になっちゃったから、もう必要ないっしょ」
「……マジで?」
隆二の告白に色んな線が頭の中で繋がる。
奈々は最初から俺を?
「元々お前のファンだよ、広臣。ゆきみが心配してたのは、奈々ちゃんが傷つくこと。それぐらい警戒されてんだよ俺達世間では。遊ばれるだけなんじゃないか?って…けどそれが現実。俺達のプライベートなイメージはそう思われてるってこと。広臣だけに限らずだけどな」
俺達の何を知ってる?って、言ってしまいたいけれど、プライベートを赤裸々にあかして、俺達はさほど遊んでいないよ!って否定することは常識で考えてできない。
カメラの入ったところでプライベートをあかすなんて馬鹿なことは誰もしない。
人気が出れば出るほど、そのレッテルは無言で貼られてしまうものなのかもしれねぇ。