プライド1
直人さんに「明日は来るよ」って言われたせいか、翌日の俺は朝から気分は上昇していて、そわそわ落ち着きのない様子だったんじゃないかって自分でも思う。
「おはようございます!ご迷惑おかけしてすみませんでした!」
そう言って丁寧に頭を下げる奈々に自然と頬が緩んでいる。
「もう大丈夫なの?」
直人さんが奈々の顔を覗きこむように近づいて聞くわけで。
え、その距離ダメじゃない?
ゆきみさんにチクるよ?
そんな俺の心の声が届いたのか、直人さんはスッと一歩後ろに下がって。
次の瞬間、視線は俺…――「奈々、大丈夫だった?」遮ったのは隆二だった。
おいおい、被ってんぞ!
思いっきり隆二をドついてしまいたい衝動にかられる。
たかだか一週間会ってないってだけなのに、何でこんなにもドキドキすんだよ。
”逢えない時間が二人の愛を育む”なんて言葉はあるけど、たぶん想ってんのは俺だけだろうな。
それでも今この場所に奈々がいてくれる嬉しさは半端なかった。
「うん隆二心配ありがと。迷惑かけちゃってごめんね…」
「いや全然!奈々の為ならあんなことなんでもないよ」
…隆二!?
あんなことってなに!?
思わず俺は直人さんを見た。
この人なら何でも知ってるはずだって。
でもだからこそ、真っ直ぐに俺を見ていた直人さんとバッチリ目が合った。
つぶらな瞳を真っ直ぐ俺に向けていて。
それはなんていうか、反応を見ている…そんな風にも見えるわけで。
何か知ってる!って直感があった。
一歩近づく俺に、次の瞬間直人さんは視線を外して直己さんの方向へと歩いて行く。
ちょ、ずりーよ待てって!
脳内の言葉を口にすることもできなくて、ただモヤモヤした気持ちだけが胸の中に溜まっていく。
「奈々、もういいの?」
だったら、って。
自分の足で隆二を退かして奈々の所に行ってそう聞くとやっと奈々と目が合った。
ほんの少し潤んだ大きな目で俺を見上げた奈々はすぐに目を逸らして。
「はい。ご迷惑かけてすみませんでした!また今日からよろしくお願いします、臣さん」
……なんで敬語?
なんで臣さん?
はっ!?意味分かんねぇ。
俺が臣さんで、隆二が呼び捨てなわけが。
臣って呼んでたじゃん俺のこと。
なんだよ、急に他人行儀にしやがって。
腹立つ奴。