独占欲1



直人さんとゆきみさんは何も俺に聞くことなくそこに俺と奈々を通した。

タクシーで俺の気持ちを聞いた直人さんは、この部屋に入る時、ゆきみさんをポンポンってして、そこに無言の会話が俺には見えた気がする。


【とりあえず様子見で】

【…わかった】


実際どうなのかは分からねぇけど、でもだから俺に何も聞かないんじゃないかって。

スッとゆきみさんの隣に座る奈々。


「ここの鍋絶品だよ」

「コラーゲンたっぷりだから!」

「好きだよね、女はコラーゲン」


直人さんとゆきみさんの会話を静かに聞いている奈々をジッと見つめる俺の心臓はやっぱり少し痛くて。


「臣嫌いなものある?」


不意にそう聞かれてドキッと大きく音を立てた…気がする。

2人きりで飯に来てたらどーなってたんだろうか?

個室で2人きりなんて…

想像しただけでちょっと怖ええし。

自分がそんなに理性のない奴だとは思ってないけど、前科があるし、自信はあまりない。


「ないよ、なんでも食う!奈々取って」

「もーすぐ甘える!」

「いーじゃん別に」

「調子にのるな!」


ぷぅって頬を膨らませるその姿が純粋に可愛くて自然と笑顔が零れる。

そんな俺と目が合った奈々は、あの照れた顔で嬉しそうに微笑むんだ。

―――――――――忘れてるわけじゃねぇけど、マジで男いるんだよね?

どんな奴かマジ見てみたい。

奈々を一人占めして、奈々の愛を全部受けてる奴はどんな気持ちなんだろう?


「隆二が同じことしてもそう言うの?」

「…え?なんで?…臣、隆二に敵対心ありすぎじゃない?」


奈々が小首を傾げて俺を見つめる。

その横でゆきみさんは俺達の話をまるで聞いていないかのよう、直人さんと全然違う話をしている。

それがたぶんわざと…なんだと思うけど、なるべくこの二人を怒らせないようにしねぇと…なんて思ったり。

隆二と比べちゃう俺は、奈々からしたらガキなのかもしれないけど…


「だって奈々、隆二のこと好きそう…俺よりもずっと…」

「そんなこと…臣のこと好きだよ、あたし!」

「そう言うと思った。隆二より俺のこと好きってことでいい?」


満足げに微笑むと、奈々がカアーって赤くなった。

だから俺は奈々の飲んでるすげぇ甘いジュースみたいなカクテルをグビっと飲み干す。


「あ、あたしの!もう臣〜」

「ジュースじゃん、こんなの!これ飲んでみ?」


俺のグラスを奈々に差し出すとその手をゆきみさんがピシャっと払った。


「いってぇ」

「奈々お酒弱いの。無理やり飲ませる男はかっこ悪いわよ」


…あ、やっぱ俺らの会話めっちゃ聞いてたのね、二人共。

まぁそうだよね。


「すいません…」

「あたしのピーチ頼む〜」

「奈々ちょっと酔ってる?」


ゆきみさんが奈々を覗き込んでそう聞くと、「ふふ、久しぶりお酒…」ヘラって笑った。

うわ、やべ…

超絶可愛いじゃんそれ…

そう思う俺を見透かすみたいに直人さんが俺をジッと見つめる。


「酒飲まないの?普段…」


俺が聞くと、コクって頷いて「今日は特別!ゆきみと臣がいるから…」…その瞬間、直人さんが「うおおおおおおおおいいっ!」って叫んだ。


「あ、ごめん、直人さんもね!」

「すげぇついで感満載なんだけど…」


苦笑いする直人さんに思わずプって小さく笑った。






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