守るべき人1



前に進むから…

なんてかっこつけたことを言ったものの、何一つ変わることのない現実を生きるだけで精一杯で。


「隆二また寝れなかったの?」

「あーうん。何か色々考えちゃって…」

「今日からキツイよ。何か眠りやすいアロマとかあたし探してくるから」

「奈々ありがとー」

「うん」


…いつから隆二呼び!?

行沢さんはあの直人さん宅飲みの日から、俺達との距離がグッと近づいたっつーか。

「隆二」と「奈々」って、恋人かっ!


「みなさん呼びやすいように好きに呼んでください!」


って確かにメンバーみんなに言ってたけど、隆二のこの反応はマジで珍しすぎねぇ?




「っ…みっ…――臣っ!?」

「え?」

「険しい顔してっけど?」


ELLYに言われてハッと我に返る。

つい隆二をジッと見ていた俺を変に思ったのかELLYもジッとそんな俺を見ていて。


「隆二ってあんなだったっけ?」

「え?今市くん?なんのこと?」

「…行沢さんと隆二。あんな仲良しだったっけ?」


俺の質問にELLYの視線が二人にいく。

隆二の頬に触れてファンデーションをのせている行沢さん。

椅子に座っている隆二の足の間にチマっと納まって肩に手を乗せてジッと至近距離で見つめ合っていて。


「普通じゃない?」


何も気になんねぇELLYのがおかしいんじゃねぇか…

いやいや俺が気にしすぎ?


「臣さん…顔に出てますよ、奈々さんと隆二さんのこと…」


耳元で聞こえた悪魔のささやきにジワリと脇汗を感じた。

そんな俺を見てニヤって笑う岩ちゃん。


「…なんのこと?」

「嫉妬するんだ臣さんも…」

「してねぇよ」

「嫌ですよね。俺ゆきみちゃんが現場にいたら最悪だと思います。常に直人さんとイチャイチャされたらさすがに凹みますよ…」


シュンとする弟。

う〜んこいつマジでゆきみさんを?

正直なところ俺らも岩ちゃんがどこまで本気なのか分からなくて。

だから下手なことも言えない。


「するだろうね直人さんなら…」


目に見えて分かる兄貴の緩んだ顔に思わず苦笑いを返す。

岩ちゃんは鏡越しに笑顔で話している隆二達を見て「隆二さん俺もちょっと違って見えます…」マジか。

岩ちゃんでもそう見えるってことは…


「けど奈々さんどのみち男いるし…」


忘れてたわけじゃないけど、行沢さんは馴染みすぎてて肝心なことを忘れそうになる。


「言っとくけど、別に何とも思ってないから」


とりあえず岩ちゃんにそう言うと「分かってますよ」ニヤリと笑ったんだ。





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