可愛い小悪魔1
隆二早く帰ってこいよ…
そう思いながらも便所から出ると当たり前に楽しそうに話している直人さんと行沢さん。
話してる内容は専らゆきみさんのこと。
酔うとたいていデレデレになって直己さんとイチャイチャし始める直人さんだけど、やっぱり今日はちょっと違って見える。
そこにゆきみさんがいるといないじゃ直人さんの心持ちも違うんだろうなーって。
俺もジュリを自慢に思っていたからその気持ちは分かるつもり。
誰の前に出しても恥ずかしくない、むしろ自慢の存在であるジュリをよく友達の集まりに連れてったっけ。
見かけも普通に綺麗だったジュリはいつだって俺の友達の心までも持っていってた。
だけどそれすら俺には優越感で。
自信があったんだ。
ジュリが俺以外の奴になびかねぇって。
ある程度の余裕は必要だけど、ある程度のヤキモチも本来必要なの?かもしれない。
直人さんを見ていてほんの少しそう思った。
カチャっとドアを開けてリビングに入ると、俺がいなくなる前と何も変わらない二人がいて。
「お帰り、臣ちゃん」
直人さんの呼び方が広臣から臣ちゃんに変わったことで、直人さんの酔い度が結構あがってるんだって分かった。
「直人さん結構きてますね…」
「そう?別にいいのゆきみいるから」
ここに岩ちゃんがいたら嫉妬しそうなくらいゆきみさんを愛している直人さんが少し羨ましい。
「行沢さんはいないの?」
ちょっとだけ冷静になった俺は、やっぱり胸の奥でつっかえていたことを聞いてみたんだ。
逃げだと思われたくないからかもしんねぇけど。
「恋人?」
「そう…」
「いるよ、高校の時からの同級生。ゆきみも知ってる人」
…なんだ、そうだったんだ。
つーか俺一人で何焦ってたの?
別に彼女がそういう目で俺を見ていたわけじゃないって分かってるけど、何でか気持ちが落ちた。
「へぇ、どんな人?」
「すっごく優しいかな。あたしにもみんなにも…」
「そっか。よかったね」
「登坂さんだってモテルでしょう?」
「全然モテないって」
「嘘だー。あたしが芸能人だったら絶対狙うもん!」
ニヒって白い歯を見せて笑う行沢さんは芸能人になれそうなくらいに奇麗で可愛い。
そんな人にそう言われて悪い気はしない。
「奈々ちゃんならなれそうだけどなぁ、芸能人」
「ですよね。最初見た時何この美人!って思いましたもん俺」
直人さんに続いてつい熱くそう言った俺に、物凄い照れながら首を左右に振って否定をした。
「言いすぎ!」
「いや言うよ。今度ドラマで共演したいぐらい」
恋愛もののドラマ…やるなら行沢さんとがいいな〜なんて適当なことを思ったんだ。