調子狂う1



「お邪魔します」


この前の打ち上げぶりのゆきみさんが、ドアを開けて中に入れてくれた。

相変わらずお洒落な直人さんのマンション。

前は生活感のなかったここも、ゆきみさんの色が入るだけで何だかちょっとエロイ。

うちのリーダーはここでいつも癒されているんだって思うと不思議な感覚だった。


「ゆきみちゃんやっほー!」


相変わらずなのは岩ちゃんも一緒で。

懲りない岩ちゃんを軽く尊敬しつつ俺は奥のソファーへと移動する。


「奈々お疲れ!荷物貸して。お泊り久々だね。高校生以来、めっちゃ嬉しい!」

「うんうん、やばいよね!」



まぁそうだよな。

キャッキャッしながら寝室へ入るゆきみさんと行沢さん。

直人さんは客間か…ちょっとウケル。


「急ですいません」


行沢さんと一緒に寝室から出てきたゆきみさんに頭を下げる。


「あはは全然いつでも来て!あ、臣くんエッセイ読んだよ〜。写真きわどいのあってテンションあがった――!あれファンの子は鼻血もんだね!」

「きわどかった?」

「うん、アンダー見えそうなの…」

「あ〜あったかな…。あ、見る?」


ベルトに手をかけた所で「ばかちん!」直人さんの鉄拳が飛んできた。


「冗談っすよ直人さん」

「冗談が過ぎるわっ!まったく」

「いやでも、ゆきみさん残念そう…」

「うっさい!ゆきみちょっと来いっ!」


そう言って今出てきた寝室へゆきみさんを連れてっちゃった直人さん。

必然的に行沢さんと二人になるわけで。


「あたしも読みました、エッセイ」

「あ、マジ?」

「はい」

「………え?感想は?」

「あ、そうですよね。えっと…同じクラスにいたかったです…なぁんて」


クラス?

学校?


「そしたら好きになってた?」


覗きこむように行沢さんの髪に触れるとほんの少しその大きな瞳を見開く。


「登坂さんの彼女は、幸せだったでしょうね」

「―――え?」

「だって自分の為に授業抜けて殴りに行ってくれるなんて…嬉しいじゃないですか。あたしなら絶対別れない…」


…本気で言ってんの?

幸せだったなんて…言われたことねぇよ。

いつだって可哀想って。

登坂くん酷い!って。

本当に好きなの?って。

付き合った彼女の友達にはそういう目で見られてきたから、俺と付き合って幸せだった…そんな言葉は今まで一度も聞いたことない。

なんか、調子狂う…





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