責任とって

出会いは偶然だった。

たまたまclubに行ったその日、滅多に現れない三代目メンバーが数人きていて。

一緒に行った友達の先輩が三代目の知り合いで飲み合わせることになった。


「この子ファッション好きで、エリーと話合いそう」


私がエリーさんを好きなことを知っていた先輩が押してくれて、物凄く緊張したけれどこの日はお酒の力を借りてエリーさんと色んな会話ができたんだ。


「週末暇?ちょっと買い物付き合ってくれない?」


clubの隅でこっそり言われたその台詞に、舞い上がらない訳が無い。

答えは勿論イエス。

そうやって今日、大好きなエリーさんとのデートが実行された―――――――。



お洒落なエリーさんは色んなお店を知っていて。

まだ私が見たことのない世界を少ない時間で沢山見せてくれた。

隣にエリーさんがいるってだけで、夢のようなことなのに、目の前で一緒に珈琲飲んだり、服を合わせたりだなんて…幸せすぎて頬がゆるみっぱなし。


「すげぇ買っちゃったよまた」


一通り買い物を終えた私達。

これまたお洒落なCafeでお茶をしながらそんな会話。


「どれもエリーさんに似合ってて素敵でしたよ」


私がそう言うと照れたように笑ってそっと目を逸らすんだ。

こーいうの慣れてそうなイメージなのにこうやって向かい合っているエリーさんはわりと普通っぽい。


「健二郎さんに服あげちゃおっかな、また」


そう言って珈琲を一口飲んで笑った。

静かに流れていく時を止めることは出来なくて、カチャッとカップを置くと「送るよ」一時エリーさんが言った。

その瞬間物凄く切なさを増して。

帰りたくない。

もっと一緒に居たい。

また逢いたい…


そんな欲望が私の中に溢れ出す。

けれど何も言える訳もなく、私もカップを置いて「はい」小さく頷くしかなかった。

車で駅まで送って貰う。

運転手さんを残してエリーさんだけ私を見送りに出てきてくれた。

もう、逢うこともないよね。

これっきり、だよね。

苦しいくらいにこんなにも想いが溢れてるっていうのに何も言えなくて。


「ありがとうございました。すごく楽しかったです」


そう言って深く頭を下げた私を無言で見送るエリーさん。

くるりと反転して歩き始めた私を、不意に後ろから手首を掴まれて…

気づくとエリーさんの腕が私の背中に回っている。


「あのさぁ…俺、ユヅキのこと好きになっちゃった…責任とって…」


耳元で掠れるその声に、心臓が半端ないくらいにドキドキいってる。

だけど、私を抱きしめているエリーさんの心臓は私の耳に位置していて、その鼓動はドクドクと早い。

まさかエリーさんも緊張してるの?

そう思えるくらいの早鐘で。

そんな上から目線の台詞言ってるのに、何だかドキドキしているエリーさんが物凄く可愛いんだ。

ギュッとエリーさんの服の裾を握ると、ほんの少し隙間を見せるエリーさん。

私が黙ってエリーさんを見上げると、照れたその顔をそっと寄せた――――――

目を閉じると触れ合う唇。

ほんの少し震えているその唇に、エリーさんの想いが大きいことを自然とくみとって。



「もうエリーさん素敵すぎです。このまま二度と逢えないって思ってたんですから私!」


涙混じりに私が言うと、ニコッと優しい笑みを浮かべて言ったんだ。


「責任とってやるって俺が!ユヅキのことずっとな!」


クシャっと前髪に触れた手がまた私の背中に回される。

今日から私達二人の物語がはじまったんだ。




*END*

Special Thanks Love AYA