まだ足りない?

ポカポカとなり始めた小春日和。

最近ハルちゃんの影響で気になっているケンチさん。

勿論私の恋人はたった一人直人って思っているし、直人への気持ちに嘘なんてないけれど…EXILEというグループが魅力的だっていうこともあって…―――ことにして…私の気持ちはブレブレだったりもする…。


その日はケンチさんといい感じのハルちゃんとランチしてきたばっかりで、だからそんなつもりはなかったんだけど、脳がきっとケンチさんモードだったんじゃないかって。

なんて言い訳が通じるほど世の中は甘くない。

ハッとして目を開けるとソファーの上で目の前には大股開いてこっちを見ている直人。


「え、直人!お、お帰り。早かったね…」


あきらかにその顔が怒って見えるのはどうしてだろうか…

夢見心地の私の頭を軽くポカってする直人は最高に機嫌が悪い。

ムスっとしたまま私を見つめる直人はジロっと私を睨んだまま口を開けた。


「どんな夢見てたんだよ?」


そんな言葉を発して。


「…夢?」


そう復唱した瞬間、今まで忘れていたその夢がバ―――っと脳内にフラッシュバックしてきたんだ。

思わず口元を手で覆って顔を隠す。

だって何か私、すごい夢見たじゃん!!

スッと口元によだれがついてないか手で確かめたけど大丈夫そうで。


「えっと…な、なんでかな?」

「自分の胸に聞いてみろ」


トンって直人自身の胸を拳で叩くけれど…夢だよ、仕方なくない?

私の意思とは関係ないのに…。

だから…


「私の意思じゃないよ〜直人…」


情けない声を出す私に向って「ふうん」そう言って前屈みで私に視線を送る。


「ケンチさんと…何したの?」


…うそぉ、寝言?

思わず目を逸らすと直人が私の腕を引っ張ってフワっと抱き寄せられる。

でも唇スレスレでキスしそうでしないままジっとド至近距離で視線を合わせるんだ。

それだけで心臓はバクついているっていうのに、そのままフウ〜ってわざと息を吐きだす直人にドキンっと胸が高鳴った。


「答えろよ、ユヅキ…」

「…直人…」

「答えねぇとキスしてやんね」


そんな意地悪なことを言われて。

直人にそうやって触れられるといつだって直人にもっともっと…って求めたくなっちゃう私を分かってそう言ってるんだって。

だからきっと嘘も通じないって…



「…キス…された…」


そう言うと、チッて舌うちが聞こえて、次の瞬間には私の後頭部に腕を回した直人が私の唇をベロンって舐めるようなキスをした――――

直人に合わせるように舌を出してキスに答える。

私を抱く腕に力が入って更にキスを深める。

分厚い舌で私の口内を舐めまわす…

歯列をなぞって舌を絡め取ってチュウ〜って吸いつかれて…

キスだけで呼吸があがって抱かれたくなる。

だからギュって直人の背中に腕を回して抱きつくと、チュパってリップ音を立てて直人の舌が透明の糸を引きながら私から離れた。

完全その気になった私は逃げる直人を追いかけるように自分から舌を直人の口の中に入れて絡ませた。

されるがままの直人はそのまましばらく私からのキスを受けていて…――――

肩で大きく息をしながらゆっくりと直人から離れる私の耳元で甘く囁いたんだ。


「まだ足りない?」


ドヤ顔でそう言った直人。

もうケンチさんのことなんて当たり前に頭の中になくって。

素直に「全然足りない…」そう言う私を抱きあげてそのまま奥の寝室へと運んだ。


「夢でもキスなんて絶対ぇさせねぇからもう…」


そう言って直人の本気のキスが落ちてきた―――――




―――でも、ケンチさんのキス…めっちゃ甘くてよかったんだよ。

なぁんて内緒にしておこう!





*END*

Special Thanks Love MOCHI