黙ってついてこい

結婚適齢期なんていわれる男の34歳。

35歳になる前にできれば未来へ繋げたい。

Xmasにプロポーズ…俺って最高にいかしてるんじゃねぇか!

自分を高めつつ、待ち合わせ場所で最愛の恋人ユヅキを待っていた。


「啓司!お待たせ」


ポンッと横から腕を叩かれて振り返ると愛するユヅキが俺を見上げていた。


「おお!全然待ってねぇから」


そう言ってすぐにユヅキの手を握った。


「すごい人やねぇやっぱり。今日はどこ連れてってくれるん?」


小柄なユヅキが人にのまれねぇようになるべく俺の腕ん中に隠して歩く。

とりあえず有名なドデカイXmasツリーの前で止まった。


「うわぁ、すごいなぁ…めっちゃ綺麗」

「うん」

「飽きひんねぇ、ずっと見てても」


嬉しそうにツリーを見上げるユヅキが可愛くて、つい抱きしめたくなる。

でもまだだ。

まだ抱きしめちゃダメだ。

一つ息を吐き出してから、すぅーっと大きく吸い込む。

冷たい空気を肺に吸い込んで、次の瞬間真っ直ぐにユヅキを見下ろした。


「ユヅキ」

「うん?」


何の疑問もなく俺を見上げるユヅキの頬に手を添える俺。

一瞬驚いた表情をしたけど、そのまま俺を見つめ続けるユヅキ。


「黙ってついてこい!!」


思いっきり言おうとするも、何故かこんな時に限って緊張して言葉になんなくて。

だからなのか、ぶつぶつ小さい声で「黙ってついてこい」を繰り返す意味不明な俺。


「え?なに?啓司」

「黙って…」ぶつぶつ…

「黙って?うるさい?私」

「いや、違う違う!いやあーまぁさ。そろそろ…ね…」


誤魔化しもきかない無理めな俺に、ちょっと首を傾げているユヅキ。

こんな俺に文句も言わずについてきてくれるのは、世界中どこ探したってユヅキ以外にいねぇと思う。

やっぱり男は口にしねぇと男じゃねえっ!!


「黙ってついてこい!ユヅキ!」


意を決して言ったその台詞に、キョトンとしながら「うん分かった」なんて言うユヅキ。

でもこれといって緊張感すらなくて。

あれ?


「で、どこ連れてってくれるんよ?早ういこう、啓司!」


腕をクイッと引っ張ってそう言われて、あれ?何かおかしいぞ。


「…お、おう。ずっと一緒ってことだぞ?」

「え?当たり前やん。私啓司以外どーでもええもん」


はっ!?なんだよそれ…

そーいう可愛いことやめろよ。


「あのさ、今のプロポーズっぽくなかった?」

「…え?どれ?」


見事に伝わってない係?


「いや、ユヅキって俺と結婚したい?」

「…うん、そりゃ」

「だよな!俺も俺も!」

「…啓司!あんな、女はちゃんとプロポーズして欲しいんよ。ちゃんと言ってよ」


言ったよ。

とは言えず、また明日出直そうと思う。

とりあえず俺の気持ちとユヅキの気持ちが一緒だったってことが確認できたからよかったかな。

んじゃXmasデート楽しみますか!!





*END*

Special Thanks Love AYANA