ずりぃ――!!
モテますよね!?
よく聞かれる言葉…―――――だけど実際の俺は、片想いのが多かったりする。
自分が気になってる相手に好かれることはえらく難しいと思う。
そう、彼女に至ってもそれは変わらない現実だった。
「久しぶり」
「あ、臣くん!こんばんは!」
ニッコリ笑ってそういう彼女に俺は微笑んだ。
直人さん宅で行われるホームパーティーで時々見かけるな〜って思ってたら、直人さんの恋人ゆきみさんの古い知合いだったみたいで、ここに来るようになったんだった。
「アルバムすごい売れてますね!私も買っちゃいました!」
そう言って嬉しそうに歯を見せて笑う麻美ちゃん。
まぁ、可愛いんだ。
「なになに、俺がすげぇかっこいいって!?」
「もー岩ちゃん!今私臣くんと喋ってるんだから邪魔しないでよ!」
「いーじゃん別に!減るもんじゃないんだから!」
ガシって麻美ちゃんの肩に腕を回すガンちゃん…。
この二人、同じ年だからか、妙に仲が良くって…―――じつはすげぇ嫉妬してる。
けどそれ出すなんてかっこ悪いことしたくねぇし、余裕がない俺も見られたくなんてない。
だからいつも大人を装って微笑ましく見守っているフリ…―――そう、フリ。
ピンポーン!
あれ?三代目以外にも誰か来るの?
「麻美ちゃんごめん出て―――!」
キッチンからゆきみさんの声。
でも直人さん宅の玄関麻美ちゃんが開けちゃマズイっしょ!
俺は慌てて立ち上がって「俺行くから」そう言って玄関を開けた。
「よっ、登坂!」
肩手を上げて爽やかな笑顔を飛ばすのはEXILEの哲也さん。
「あ、どうも。哲也さんも?」
「そうそう、直人に呼ばれて…」
「あ、どうぞ!」
そう言って哲也さんを中に入れた俺の後ろで麻美ちゃんが口をパクパクしていて。
その少し後ろから顔を出したのはゆきみさん。
「もう、臣くんダメじゃん!麻美ちゃんにてっちゃん出迎えさせるつもりだったのに〜!」
「ゆきみさん!なななんで、てっちゃんが!?」
口を押さえて真っ赤な顔の麻美ちゃん。
…なんだよ、これ…。
勝手に岩ちゃんなんじゃねぇかって思ってたんだけど、それも違うんだ…
「てっちゃんに逢いたがってたでしょ麻美ちゃん」
「そうですけど…」
「麻美ちゃん宜しくね!」
哲也さんの手なんて握らせねぇっ!!
咄嗟にそう思った俺は、思わず麻美ちゃんの手がそこに到達する前に哲也さんの手を握ったんだ。
「…え、なに?登坂なに?」
キョトンとしている哲也さんと麻美ちゃん。
思わず出しちゃた手を引っ込めることもできなくて、ブンブン哲也さんの手を握って「待ってました!」そんな言葉を苦し紛れに言ったんだ。
でも…――――
「ああ、そういうことね!安心して」
そう言うと哲也さんは自分を指差してニッコリ言った。
「俺、憧れ!」
それから今度は俺を指差してまたニッコリ言った。
「登坂が恋…で、いんだよね?」
その視線は麻美ちゃんに向いたもので、泣きそうな顔の麻美ちゃんと目が合った。
「ゆきみさん…」
だからか、ゆきみさんの腕に絡みついて顔を埋める麻美ちゃんは本気で泣いちゃいそうで。
「てっちゃん、デリカシーないよ!もう、直人さんっ!」
「ええ、俺ぇ!?…ごめん広臣…お前の気持ちみんな気づいてた…てっちゃんの言う通り、麻美ちゃんにとってのてっちゃんは憧れだよ。恋は…本人の口から聞けよ…」
直人さんがゆきみさんの後ろに隠れてしまった麻美ちゃんをゆっくりと引っ張ってきて。
え、何…みんな気づいてた!?
「ちょ、ちょっと待ってください!!みんな気づいてたって…麻美ちゃんも!?」
真っ赤な顔の麻美ちゃんは、チラっと俺を見ると、困ったように小さく頷いたんだ。
「……―――ずりぃーー!」
「ご、ごめんねっ臣くん!」
「…いいけど、マジだし…。でも、哲也さんと握手はさせないから!」
ヤキモチついでにそう言ったら麻美ちゃんが余計に泣きそうになったんだ。
「あー登坂!そういう男はモテないよ!」
余裕の哲也さんに対して…「元からモテないっすよ!」やけになって叫んだら、みんなが笑いに包まれた。
ま、いっか。
そう思ってそっと隣の麻美ちゃんの手を握り締めたんだ。
*END*
Special Thanks Love ASAMI