俺がお前の全部守ったるから
「やだ!!絶対にやだよっ!」
「ええやんかっ!頼むで…」
「絶対にイヤよ!!」
「なんでやぁ〜お前え―――」
ジロっと私を見る健二郎を、負けずと睨みつけた。
両者譲らない戦いが火蓋を切って始まった、カ―――ンッ!!!
放課後、いつも通り部室に行った私にバスケ部のエースである健二郎が言ったんだ。
「来週試合やれはるM高の偵察に行こうや」
不良高にも関わらずバスケだけは強いこのM高。
バス通学の私は毎朝M高生と同じバスに乗り込む。
先日、そこの今市くんに告白されて…お断りしたばかりだった。
そんな理由もあって、極力関わりたくないのに…。
「人の気も知らないで…」
ボソっと呟いたら健二郎が真剣な表情で私を見た。
「隆二やろ…」
急にそう言われて…「へっ?」思わず出した素っ頓狂な声。
いつもふざけた顔の健二郎が珍しく真面目な表情をしていて、それが余計にドキっとする。
よく見ると絶対イケメンな健二郎は、その達者な言葉づかいであったりノリで、クラスでも部内でもムードメーカーだった。
だから気づいていない子も多い、健二郎がかっこいいってことに。
「断ったんやろ?」
「…え?」
「別に何もせぇへんやろ、隆二かて」
健二郎の言葉に危うく頷きそうになったけれど、おかしいよねっ!
「何で、知ってんの?!」
「何でもや!」
得意げに言うけど…―――やっぱおかしいって!!
「え、ストーカー?」
「アホかぁ!たまたまや!偶然耳にしただけやん」
「偶然を装ったストーカーとは達が悪い…」
「ちゃうやん!ちゃうやん!聞け!」
そう言って私の両肩に健二郎の手が乗っかって、一瞬ドキリと胸が高鳴った。
「臣に聞いたんや。あいつの彼女がユヅキが告られとったん見ててな…」
「…で?なんで健二郎の耳に入るの?」
私の質問に今まで堂々としていた健二郎に動揺が見えた。
だからなのか、胸の奥がくすぐったくて…
え、この反応…もしかして健二郎って私のこと好きなの!?
なんて、自惚れたくなってしまう。
「それはあれや〜その〜…たまたまや!偶然臣とこはるが喋ってるんを、偶然聞いたんやって…」
ポリポリと頬をかいて目を泳がせる健二郎。
ここまできたら自惚れてもいいんじゃないかって思えてきて。
「そう、分かった。でもそれなら話は早い。そういうわけで私、M高には行きたくないの。別に何もしないだろうけど、もし私に何かあったら…」
「俺がお前の全部守ったるから!!」
「…ほんとに?」
「ほんまや!ユヅキには誰も指一本触れさせへんわ!」
「じゃいいよ!」
そう言って健二郎の腕にギュっと抱きついたら「アホかぁ〜照れるやろ〜」嬉しそうにそう言うけど、私の腕を払うことなんてなくって。
二人で顔を見合わせて笑った。
「…先輩、みんないるんっすけど…」
1年の大樹くんが気まずそうにそう言ったんだった。
*END*
Special Thanks Love W.REON