お前は俺が好きなんだろ?
「土田く〜ん!」
そう言って(私の)哲也さんの隣に堂々と座り込む女、サチコ。
ちょっとどきなさいよ!!
てゆうか、触らないでよ!!
お酌とか間に合ってますからっ!!
散々頭の中ではそう言っているのに、実際口に出した言葉なんて何もなくて、小さく溜息をつくだけ。
勿論ながら哲也さんが私のものだっていうこともなく…単なる片想いって奴。
それでも常日頃哲也さんへの愛は本人に伝えてきた。
だから周りは勿論、哲也さん自身も私の気持ちは分かってくれているはず…―――なのに。
「悔しい。あのクソアマ…」
ボソっと出た低い声に、隣にいた登坂くんがブハッとレモンサワーを吹き出した。
「協力してやろっか、ユヅキちゃん」
ニンマリちょっと怪しげな笑みを浮かべてそんな誘惑。
思わずゴクリと生唾を飲み込みたくなる。
「協力って?」
「哲也さん妬かせたくない?」
…すごい、妬かせたい!!!
そうは思うものの…「妬いてくれるのかなぁ」自信なんて当たり前になくって。
私が勝手に好きで追いかけているって、そう言われちゃったらそれまでだし。
でも―――――
「とりあえずもっと近寄って俺に」
登坂くんが膝1つ分私に寄って言うから、コクっと小さく頷いて私は登坂くんの方に近寄ったんだ。
次の瞬間―――――
「もーユヅキちゃん、すっげぇ可愛い!!」
吃驚するくらい、注目浴びちゃうぐらいの大声でそう言って、みんなの視線が集まったと同時に登坂くんが私の耳元で小さく囁いた。
「そのままジッとしてて、ちょっと恥ずかしそうに俯いて。哲也さんの方は見るなよ?」
「…うん」
「いい感じ。たぶん哲也さん今めちゃくちゃユヅキちゃんのこと気にしてる」
登坂くんの言葉を間に受けてドキドキしてくる。
「そうだといいけど」
「ね、二人で抜けない?」
不意にそう言われて、登坂くんが立ち上がって私の腕を引き上げた。
されるがまま登坂くんに連れて行かれる私を…
「ユヅキ」
―――――たった一言で止めるんだ。
振り返った私を座ったまま見つめあげる哲也さん。
ドクン、ドクン…と心臓が鳴っている。
「…はい」
「お前は俺が好きなんだろ!?」
ゆったりとそう言う哲也さんは、真っ直ぐ私を見つめていて。
登坂くんが私の腕をギュッと握っていることすら忘れそうになる。
「あの、哲也さん…」
「ダメでしょ、俺の傍にいないと」
「…はい」
「いい子。こっちおいで」
クイッて指先を自分に向ける哲也さんに、繋がれていた登坂くんの腕をそっと離した。
「哲也さん」
「なーに?」
「大好き…」
「俺も」
フワッて微笑む哲也さんに、結局この人には勝てないんだって、確信した。
*END*
Special Thanks Love YUYU