けんじろうの恋愛事情 | ナノ


▽ バレバレ



「俺トイレ行くわ」


そう言ってさり気なく荷物を持って立ち上がった。


「健ちゃん1抜け!?」

「巡り会っちゃったもんなぁー健ちゃん!」


臣と隆二の言葉に背中を変な汗が伝った。

残念なことに、俺と抜け出したい女子はここにはおらんようで。

いざ抜け出そうと試みるのも勇気がいる。


「あいや、その…」


苦笑いで二人を見返すと笑顔で手を振っている。


「焦んなよ、健ちゃん!」

「無理やりキスとか迫っちゃダメだよ、健ちゃん!」


俺ってそんな目で見られてるんかいっ!?

いやでもここは素直に従うべきやな。

この成功者たちに。


「すまんなぁ。初めてで俺もよう分からんくなっとる…」


ヘコっと頭を下げると臣ちゃんがスっと俺に手を出した。

え、なに?


「お代!二人分払っといてよ!」


抜かりないなぁー臣ちゃん。

財布からユヅキちゃんの分の金も払うと俺はみんなに頭を下げて「お先ですっ!」そう言ってユヅキちゃんの待つ飲み屋の外へと急ぐ。


「あ、待って待って!」


三歩歩いた所で呼び止められて。

振り返ると俺に興味の無い合コン女子。


「なんすか?」

「ユヅキ、やり手だから、よかったね!おめでとう、脱チェリー!」


大声で言うもんやから、周りの席からの視線を集めた。

しかも脱チェリーって言葉に異様に食いつく知らん人達。


「兄ちゃん頑張れよ!」

「素敵な夜を!!」


色んな言葉をかけられてる俺を腹を抱えて笑って見てる臣と隆二に脳内で舌打ちしつつ、俺はまるでHEROかのよう、両手を上げてこの飲み屋から出て行った。


初めてのお持ち帰り、できるやろか。





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