けんじろうの恋愛事情 | ナノ


▽ 合コンフラレ術



「山下健二郎30歳、趣味は釣りとラジコン。別にオタクちゃうけどいかんせん一度もモテへんかった。ゆえに…女経験ゼロっす…」



―――もはやこれが俺の代名詞なんちゃうか?ってほど。

嘘つく必要はないと思って毎回ご丁寧にこの台詞を言うと、100%女はドンびく。

よって、今の今まで女と付き合ったことがなく…

それでもええわ…って強がっていたんは周りの男達も特定の彼女を作らないで遊んでいたから。

それが30直前にして、一気にみんな結婚を意識したかのよう、家庭的な女を選びよって。

最後の最後でこの合コンにかけていた俺は、こうしてまたお持ち帰りできる子とも出逢うことなく一人寂しい家路につく…――――はずやった。




「あっは、可愛いね、健二郎くん」


聞こえた声に視線を向けるとおかっぱヘアーのお姉さんがおって。

俺を見てニコニコ笑っている。

勿論のことながらおかっぱお姉さん以外の女の子はみんな俺を天然記念物みたいに見ていて。


「おお、興味ある?」


すかさず臣がそう言うと頬杖をついたまま「すっごいある」甘い視線が絡み合ったんや。


「あ、私ユヅキ。健二郎くんと同じ30歳。残念ながらお嫁さんにしたいって言ってくれる人にはまだ出逢えてないみたい…」

「今日巡り合っちゃったんじゃないの!?」


ノリノリで隆二が言うからなんや無駄に恥ずかしくなった。

でもそんなチェリーな俺に対して余裕の笑みで「どうかな」って笑うユヅキちゃんが物凄い気になる。

女の趣味は?とか、好きなタイプは?とかよう聞かれるけど、正直これってもんはない。

しいてゆうなら”俺を好きになってくれる人”…なんつったら臣ちゃんに馬鹿にされたけど。

でもそれが一番大事なことやって思ってる。

だって切ないやん、俺だけが相手を好きやなんて…――――



「隣座っていい?」


そう言ってユヅキちゃんが俺の隣にやってきた。


「もちろん!」

「関西人なの?」

「そう、出身京都やねん。大学こっちの受けて出てきた」

「そうなんだ!京都行ってみたいな〜」

「ええよ、案内すんよ!」

「やった!約束だよ?」


フワっと彼女の腕が俺の腕に触れて、同時に甘い香りが漂った。

なんや目眩しそうなほどこの展開が心地いい。


「はい、LINE教えて!?」

「え?」

「だって京都行きたいもの!」

「…京都かいっ!」


つい癖でパコンって軽くユヅキちゃんの腕を叩くと目を大きく見開いて固まってる。

あっかん…いらんことしたやん俺ぇ!

せっかく俺に興味持ってくれはった人やのに…


「あっは、突っ込まれた!もう可愛い、健二郎くん!ヤバイなぁ〜」


ポカポカ痛くない鉄拳を俺に打ち込むユヅキちゃん…

「ヤバイなぁ〜」の「ヤバイ」の意味が気になって仕方あらへんやんっ!!





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