二日酔い
「頭いて…」
そう言って始業早々デスクに蹲った。
今朝の有り得ない状況に自分が一番吃驚している。
どういう経緯でああなったんだっけ!?
ていうか、私…大丈夫だったの?!
溜息しか出てこないんですけど…。
俯く私にポンっと朝から爽やかな香りが漂って「おはよう!ユヅキ!」肩を叩いたのはうちの営業部のエースの哲也。
とにかく仕事ができて上司からも部下からも好かれている上に、イケメンだから女子からの人気がダントツで。
私は同期だからこうしてよくよく話しかけられる。
「二日酔い?」
そう言ってニヤって微笑む哲也。
その言葉に無言で頷くと更にニンマリ笑うわけで。
「どうだったの、隆二とは…。ユヅキそうとう酔ってたけど隆二が離す気なかったからそのまま二人にしちゃったけど…」
哲也の言葉に一気に目が覚めた。
「え、知ってるの?昨日私がどうだったか…」
泣きそうな私を上からあざ笑うかのように見下ろす哲也からは、物凄く意地悪オーラが出て見えて。
煙草をくわえてスーツの裾をまくりながら屈んで私に顔を寄せた。
「知ってるのはユヅキと隆二が一緒にタクシーに乗ったところまでな…。しかも直人が来る前に…」
ガ―――ン。
わりと頭を鈍器で殴られたような衝撃で。
やっぱり私隆二とシたの…?
どうしよう、ちょっとぐらい覚えていたかった!
…そうじゃなくて、「てっちゃん助けて〜」神の手に縋る気持ちで手を伸ばすと、その手をピシャっと払われた。
「ダーメ。自分で何とかしなさいな!言っとくけど直人を誤魔化したの俺だからね?今度飯奢れよな!」
そう言ってポンポンって今度は優しく私の頭を撫でると、「んじゃね〜」そう言って自分の席についたんだ。
ホワイトボードを見ると、【片岡 直行】の文字にホッとして。
その少し下、【今市 有休】の文字に、もっと胸を撫で下ろしたなんて。
意地悪でも優しい哲也がいなくなってすぐに「ユヅキ先輩、おっはよ〜!」元気よくやってきたのは後輩のハル。
受付嬢のハルはどうしたもんか、部署も年も違う私に懐いていて、こうして毎日私のもとに顔を出していた。
「ああ、ハルおはよう!」
「どうしたの?」
「どうもしない」
「むう…」
「いいから黙れ」
「はっ、はい!」
「珈琲買ってきてハル。ミルクたっぷりの甘いの…」
「喜んで!!」
パシリをこれだけ喜ぶ子は初めてで…。
そんなハルとすれ違いざま、1年後輩の直己が無愛想な顔を見せた。