却下
そんな直人くんをジッと見つめるゆきみ。
「あなたも奈々と付き合いたいの?」
それからそう続いて…
でも直人くんは顔を真っ赤にして「いや俺は…どっちかっつーと…」視線はゆきみに移っていく。
「…わたし?」
自分を指差すゆきみに、ヘラ〜って顔を崩す直人くん。
こんな級長のしまりのない顔は初めてだった。
「却下!」
でも臣にそう言われて、なんなら隆二も岩ちゃんの時同様に軽蔑の視線を送っていて。
「何でみんなそんなにガツガツしてんの?」
なんて言っている。
「いやだって花の高校生活っしょ!可愛い彼女がいたら楽しさ倍増じゃん!」
力説する直人くんだけど、シッシって臣の手が動いていて。
「他当たれよ」
冷たく言い放つとお弁当袋を持って立ち上がった。
それからあたしの頭にポンっと手を乗せて「じゃあね奈々!変な男に言い寄られたら隆二に言えよすぐに!」そう言ってゆきみの腕を引く。
「うん。臣、ゆきみ…岩ちゃん、またね」
あたしが言うと「明日も来るから」なんて言う懲りない岩ちゃん。
「ゆきみも、直人とか直人とか直人とかに気をつけてね。臣、ゆきみを頼むよ!」
臣に引かれていない方のゆきみの手をキュって握って隆二が言ったんだ。
ゆきみは残念そうな顔をしている直人くんをジッと見ていて。
何かを言おうとしたけれど、臣がグイって引っ張ったからそのまま臣の方に連れて行かれて。
その後ろから岩ちゃんがあたしに手を振った。
「はぁ〜何か嫌。奈々もゆきみも可愛いのは仕方ないけど…離れていかないでね?」
隆二があたしの腕を掴んで甘く囁いたんだ。
見つめる瞳はいつだって優しくて、あたしの心を満たしてくれる。
「離れないよ…隆二」
小さくそう返すと、目を細めて隆二が微笑んだ。
窓から差し込む光に照らされて眩しく隆二が映る。
本当に、隆二が恋人だったらあたし、幸せだよね…。
「俺フラれた感じ?」
あたしと隆二の側で、眉毛を下げている直人くんに「ゆきみと話したことあったっけ?直人くん」…あたしがそう聞くと「あるある!」なんて得意気に言った。
「挨拶程度だけど…。いつも奈々ちゃん達の所に来る時に”いらっしゃい”って言うと”ただいま〜”って答えてくれて…その笑顔にキュン…」
まるでそこにゆきみを想い浮かべているかのように直人くんが言った。
「確かにゆきみの笑顔は最高だけど、ダメだから!」
隆二にピシャリと言い放たれた―――。
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