SHORT U | ナノ

 紅い痕1

「え…何、これ…?」


へ?

久々のオフ。

ジムから帰った俺を待っていた愛する彼女のユヅキ。

そんなユヅキが俺を見て思いっきり泣きそうな顔で睨んでいる。

さっぱり何のことなのか分からない俺はユヅキに近寄って「なに?」そう聞いた。

だけど近づく俺から一歩下がるユヅキ。

その身体全部でまるで俺を拒否しているようにしか見えない。


「ケンチ!その紅いの何っ!?」

「え、赤いの…?」

「そうよ、紅い痕ついてる、首に!!!」


赤い痕って…―――え、まさか。

俺は慌てて洗面台の鏡の前に立つ。

首元を大きく開けたジャージの端に見えるその紅い痕。

全く身に覚えのないこの痣に俺はすぐさま洗面台から出た。

壁にへばりつくユヅキにゆっくり近づくも、また一歩退かれた。


「ユヅキちゃん落ち着いて。これ何でもないから…」

「何でもないのに、何で紅いの?…浮気…?したの?」

「まさかまさか!浮気なんてできないよ俺。ユヅキのことしか好きじゃないもの!信じてよ…俺の可愛いユヅキちゃん」


そっと手を伸ばしてユヅキを捕まえようとするけど、クルリと反転してまさかの部屋に閉じこもってしまった。

おいおいマジでしないから俺、啓司や哲也じゃあるまいし…。


「ケンチ最低っ!!もう健二郎と浮気してやるんだからっ!!」

「な…やめろって、後輩に手出すの!」

「フンッ!じゃあ哲也!いつでも電話してってこの前LINE教えて貰ったから哲也っ!横須賀軍艦カレー食べに連れてってもらう!」

「いやいや俺が連れてくから!とにかく出てきて…」


トントンって部屋のドアを叩くけど、ボスッってドアに何かが投げつけられた音が返ってきた。

俺が送ったクマのぬいぐるみ辺りが投げられたんだと思うけど。

それから何を言っても無視され、ユヅキがこの部屋のドアを開けたのは俺が廊下に座って15分が過ぎた頃だった。

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