SHORT U | ナノ

 キミとなら 1

「俺と付き合わない?」


みんなが騒いでた臣にそう言われたのは入社してすぐの頃。

受付嬢の中でも人気で。

今年の新入社員はイケメン揃いだって。

その中でも人気を誇る同期の登坂広臣が自分を好きだなんて、思いもよらず。

ガールズトークで臣の名前ばかりがあがるもんで、何となくそれが面白くなくて、本当の本当は少し気になっていたのに「私は土田先輩がいい!」ってずっと言い張っていた。

そんな時だった、臣に告白されたのは。


「は?」

「好きな奴、いんの?」


乗換駅のプラットホームでいきなり腕を掴まれて言われたもんだからかなり動揺している自分がいる。


「臣?どうしたの、急に」

「ユヅキのことずっと可愛いなって思ってて…」


ドキンっとした。

社員の中でも人気の臣が私を好きなんて。


「…いるから好きな人。臣には絶対敵わない人、ごめん…」


私を掴んでいる手に一瞬力が込められて、それからゆっくりと離れていく。


「そっか、残念!分かった、今の忘れて!ごめんなっ!」


顔の前で手を合わせて苦笑い。

冗談じゃないの?

本気だったの?

よく分からなくて、でも悲しくて。

素直になれない意地っ張りな自分が大嫌い。


この日私は、告白してくれた臣に―――失恋した。


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