▼ サイン 1
朝が弱い隆二を起こすのは至難のワザ。
気持ち良さそうに眠っている隆二。
すごく疲れているんだろうなぁ…って思うけど、もうそろそろ起きないと迎えの車が来ちゃうから。
ベッドに眠る隆二の髪を優しく撫でた。
「隆二、起きて!」
「………」
まぁこんなひと声ぐらいじゃ起きるわけもなく。
腕を掴んで肩を揺する。
「隆二、時間だよ!」
口調も少し強めに。
眉間にシワを入れた隆二は小さくうんうんって首を振った。
起きるよって合図。
でもこの合図から一向に起きないんだよねぇ、じつは。
「隆二ー目開けてー!」
「………」
シーンとしている室内。
おいおい、うんうんはどこいった?!
やっぱりな反応にふと思いついたことがある。
隆二の髪を撫でながら耳元で小さく囁いたんだ。
「隆二あのね、あと少しでATSUSHIさんが迎えに来るってさっき直人さんから連絡来た」
「え、ATSUSHIさんっ!?」
吃驚するぐらいの秒殺でいつもなら絶対に開けられない瞼を、パチッと開いて私を凝視する隆二。
「うそ、起きた…」
「ユヅキ、ATSUSHIさん来るの!?やべぇ起きなきゃ!俺の髭剃り充電してくれた?」
ドタバタ起き上がって洗面所に向かう隆二は朝一で髭を綺麗に整える。
そんな彼をジッと後ろから見ていると、もう完全に目が覚めたんであろう隆二が鏡越しにニッコリ微笑んだ。