▼愛しい君の愛する人が憎い(清姫)★

「・・・!」
ガバッと名前は飛び起きた。嫌な夢を見たようなそんな気がした。
どんな夢だったのかは覚えてはいない、でも微かに覚えているのは。
「清姫・・」
彼女に関係する記憶だった、それだけは覚えている。
名前はそっと隣を見る。
そこには静かに眠っている清姫の姿があった。
それを見た瞬間、名前はホッとすると同時に愛しさがこみ上げてきて
起こさないように気を付けつつそっと清姫の頭を撫でた。
「(良かった・・。)」
小さく微笑みながら撫で続ける。
もし、飛び起きた時に清姫がいなかったら不安になる。それに加えて心配でたまらなくなる。
だから、清姫がこうして眠っている姿を見て本当に安心をした。
「・・・んっ」
ふと、清姫が小さく身じろぐ。
気を付けてはいたがもしかして起こしてしまったか?と名前は少し慌てるが
清姫は起きる気配はなく小さく寝言の様なものを呟く。
何だろうと気になり、そっと清姫の声に耳を向けた時
「安珍様・・」と小さく呼ぶ清姫の声が聞こえた。
その名前を聞いた瞬間、名前の中にドロッとした暗い感情がわきあがってくる。
「(あぁ・・安珍・・お前は、お前は、今もずっと清姫の心の中にいるのか・・)」
それはきっと、自分にとって大切な清姫に嘘をつき
傷つけて、苦しめた安珍への怒りと憎しみ。それに加えて今もなお、清姫の心の中にいる安珍への嫉妬。
それらすべてが混ざり合った感情が今すぐに爆発してしまいそうになる。
だが名前はその感情を必死に押し殺す。
「(・・・落ち着け・・落ち着け・・!)」
何度も何度も心の中で呟きながら、必死にその黒い感情を殺す。
それは清姫にこの感情を知られないために。
この感情を知った清姫を傷つけないために。
そう、すべては
「(愛しいキミを傷つける感情なんて、いらないよ)」
愛おしくて大切な清姫のために。
名前は今日も黒い感情を殺すのだ。



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