▼貴方の手が好き(アダム=ユーリエフ)

「・・・暑い」
おかしい、今はまだ春のはずなのにどうしてこんなに暑いのだろうと名前は思う。
突然の気温上昇により、コンパスの世界も真夏日の様な気温になっていた。
その為名前以外のヒーロー達もこの暑さに参っており、バトルに行く者はおらず
皆共同ルームでエアコンをつけ涼しんでいた。
そんな名前もバトルに行く気にはなれず、こうしてぐったりとしているのだが。
「名前さん・・大丈夫ですか?」
「アダムさん・・。何とか、ですかね」
ふと名前に声をかけたのはアタッカーのヒーローであるアダム=ユーリエフだった。
彼もこの気温には参っているようでいつも着ているコートを脱いで、少し軽装でいる。
それを見て名前は「(アダムさんも暑いんだなぁ)」とそんな事をぼんやり思った。
すると、アダムは名前を見ると首を傾げ
「皆さん、共同ルームの方で涼しんでいるようですが・・名前さんは行かないのですか?」と聞く。
名前はそれに少し苦笑すると「行きたいんですけど・・人が、多くて逆に暑そうだなぁと思っちゃって・・。」
「・・・あぁ、確かに」
名前の言葉を聞いてアダムは頷く。いくらエアコンがあるからと言っても人口密度が
多いと涼しさよりも暑さが勝ってしまう。だから名前はその状況を分かってるから共同ルームに行かなかったのだ。
とは言うものの、流石にこのままここにいても暑さでゆだってしまう。
少しぐらい暑くても涼しいエアコンがある共同ルームに行くかと思っていた時だった。
「少し、失礼します」
「へっ?」
突然、頬に冷たい感覚がして名前はビクッとする。
だが、しばらくするとそれがアダムの手という事が分かる。そして、ひんやりとした温度が心地いいという事にも。
「俺の手でよければ・・名前さんを涼しくさせますが・・どうでしょうか?」
頬を優しく触りながらアダムが聞く。名前はそれを見て少しドキドキとしつつ
「えっと、気持ちいいです・・アダムさんの手、ひんやりとして落ち着きます」
そう言って微笑むとアダムも安心したようにして微笑む。
アダムは氷魔法を扱えるヒーローだ。そのせいか、彼自身の体温も冷たい。
だから普段は手に触れようとすると「霜焼けになりますよ」と言うのだ。
それはやんわりと「触らないで欲しい」と言っているのだと分かるからこそ名前は少し寂しかった。
冷たいとかそんなの関係なしに触れたい。でもそれはアダムを困らせてしまうのだと思ってしまい言えずにいた。
だからこそ、こうしてアダムに触れてもらえるのが嬉しいのだ。
「(暑いのもたまにはいいかもしれないなぁ)」
そんな事を思いながら名前はそっと、アダムの手に触れる。
「アダムさんの手、私は好きですよ」と言う
アダムはそれを聞いて驚いたような顔で名前を見る。
そして、名前も自分が今言ったことを思い返すとすぐに顔を赤くして
「あっ、えっと・・!!変な意味とかじゃなくて、その・・・!」と慌てて何か言おうとする。
するとそれを見たアダムはクスッと笑い「そう言ってもらえて光栄です」と言う。
名前はそれを見た瞬間、顔が熱くなるのを感じた。
それは気温の暑さではない、ドキドキとした熱さだった。




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