▼苦くて、少し甘い大人の味(ジーキル)

その日、名前は配達の仕事がいつもより早く終わったのもあってヤコフの経営している喫茶アムブロシアーに来ていた。
たまには仕事終わりに喫茶でリラックスしてもいいなと思ったからだ。
カランカランとドアを開けるとマスターであるヤコフが「いらっしゃいませ」と名前を出迎えてくれた。
「こんにちはヤコフさん、今日は仕事が早く終わったんでリラックスしに来ました!」
「そうなんですか、名前さんゆっくりしてくださいね」
「はい!」
そう言って席に座ろうとした時、見知った人物がいるのを見つけた。
「ジーキルさん!」
名前がそう呼ぶと、ジーキルは「・・・お前か」と言う。
どうやらジーキルも一息つきに来たらしい、テーブルの上にまだ湯気の出ているコーヒーがあったからだ。
「ジーキルさんもリラックスしに来たんですか?」
名前はそんな事を聞きながらジーキルと同じテーブルに座る。
「まぁ、そんなもんだな」
とジーキルは返しつつ、コーヒーを一口飲む。
名前はそれを見るとヤコフに「すいません、コーヒーと・・あとケーキをお願いします!」と注文をする。
するとそれを聞いたジーキルが「お前にコーヒーはまだ早いだろ」と言う。
名前はそれを聞くと「いやいや、コーヒーくらい私も飲めますよ!」と自信満々にして返す。
それを見たジーキルは「・・はぁ、そうか」と少し呆れたようにして言った。
そして、しばらくするとヤコフがコーヒーとケーキを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って持ってきたコーヒーの香りとケーキは名前にとって心が落ち着くようなものだった。
仕事で疲れている体には甘いものが必要と思い、ケーキを頼んだのは間違いではないなと思いながら名前はまずは、一口コーヒーを飲もうと思い一口口を付ける・・・。

と同時に口に広がる苦み。
「(苦・・・!!)」
何だこれは、この苦さはとすぐに思ったが我慢して飲み込む。
コーヒーぐらいならへっちゃらと思っていた名前だがどうやら予想以上に苦かったようで一口飲むとすぐにカップを置いてケーキを一口食べる。
すると、口の苦みはすぐにケーキの甘さへと変わっていき名前の表情も嬉しそうになる。
「(思った以上にコーヒーって苦いんだなぁ・・)」
とそんな事を思っていると「ぷっ」と言う声が聞こえた。
名前が顔を上げるとそこにはおかしそうに笑うジーキルの姿。
「だからまだ早いって言っただろ」と笑いながら言うジーキル。
それを見た名前はさっきの顔を見られてた恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら
「(早くコーヒーが美味しいと思えるようになりたい・・!)」と思ったのであった。



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