▼悪魔の宣言(伊瀬谷四季)

※ハロウィンパロのお話

ある村に小さな教会があった。
その教会には名前という名前のシスターがいた。
彼女は毎日村人に祈りを捧げ、そして神への祈りも欠かさなかった。
そんな彼女は村人にとても慕われていた・・だが
彼女には『知られてはいけない秘密』があった・・。

「またいるか分かんない神様にお祈りしてんの?」
「・・・それが私の務めだからだ」
そう名前が言うと青年はつまらなさそうに「ふーん」と呟く。
一見するとどこにでもいる普通の青年に見えるが頭のツノ、背中の羽、黒い尻尾の存在が
『普通』ではないと表していた。
彼の名はシキ、この教会に居着いている悪魔だ。
いつからかは不明だが気が付けば彼はいつの間にかいたのだ。
名前をとても気に入っておりこうしてよくちょっかいをかけるのだが
名前はそれを気にしないように、深く突っ込まないようにして接するので
それはシキにとって少し不服ではあるのだが。
「務めって言っても、そんなの誰も見てないんじゃないっすか?」
シキがそう言うと名前はシキを少し見つめた後。
「誰も見てようが見てなかろうが自身の務めを放棄するわけにはいかないんだ」
と言って首から下げた十字架を握る。
それを見るとシキは「名前っちは本当にマジメっすね」と笑う。
名前はその言葉に少しムッとするがいつもの事だと思い気にしないようにした。

「・・・お前はいつになったらここから出ていくんだ」
「名前っちを地獄に堕とすまで!」
「残念だがそんな日は来ないだろうな」
「え〜!?それは困るっすよ〜!!」
そう言って慌てるシキに名前は地獄に堕ちる気はないとも付け足した。
「神の加護がある限り私は地獄には堕ちない、だから私を地獄に落とすのは諦めるんだな」
そう言ってシキに背を向けて、村人たちに祈りを捧げようとした時だった。
突然強く腕を引かれたかと思えばシキの顔が至近距離にあった。
その目は真剣、そのものでジッと名前を見つめていた。
「諦めないっすよ、俺は」
その声はいつもと違い、少し低いトーンで、そんな声が言葉が名前の耳に届く。
「名前っちが地獄に堕ちたいと思うまで俺はここにいる、覚悟してほしいっす」
そう言い終えるとシキは名前の腕を離し、すぐにニッと笑うと
「そういうことっすから!」と言って姿を消した。
名前というとシキがいなくなった後、へなへなとその場に座り込んだ。
「何が覚悟しろ・・だ、バカじゃないのか」
そう呟くものの、その顔はとても赤く、声も少し震えていた。
それと同じように胸がドキドキとうるさく鳴っている。
いつもと違ったシキの目、声、表情
その全てが名前に強く印象に残らせたのだ。

そうして、翌日からシキの宣言が本当だったという事も思い知らされる羽目になるのだった。



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