▼僕だけの(吉野順平)

画面に血飛沫が飛び散ると同時に悲鳴が響く。
「ひっ……!!」
その瞬間、名前が抱えてたクッションを抱きしめてビクッと怖がるのを順平は横目で見ていた。
レンタルショップで見つけた昔流行っていた(かもしれない)DVDを見つけ、こうして二人で見てるのだがパッケージはそんな雰囲気を出してなかったがホラー映画なのだと気づいたのはついさっきの事で。
順平はホラー映画に耐性はそこそこあるが、問題は名前の方だ。
先程から驚かせに来るシーンや流血表現が出てるシーンになると大きな反応ではないもののビクビクと怖がっている。
以前、心霊特集を見てた際も今の様にクッションを強く抱きしめて怖がっていたなぁと順平は思い出す。
このまま見て大丈夫だろうか?という気持ちになり順平は名前に
「名前ねぇ、大丈夫?無理そうなら僕一人で見ようか?」
そう聞くが、名前はフルフルと首を振ると「大丈夫…、今見ないままだと怖いままだから…。」と少しひきつった笑みを浮かべて言った。
そんな名前を見て絶対に大丈夫ではない…!と思うものの、名前ねぇがそう言うなら…と順平は頷くと画面に集中する。
映画もそろそろクライマックスに近づいていた。主人公達が無事に逃げ切れるかと思った…その矢先だった。
「ニガサナイ」というひび割れた声が聞こえた瞬間、画面全体を覆い尽くすかのように不気味な顔が映し出された。
そして、その直後
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」という名前の悲鳴が響いたのだった…。

「名前ねぇ、大丈夫?」
「………こわ、かった」
あれから、スタッフロールが流れ無事に映画は終わったものの名前はクライマックスのシーンにて完全に心が折れたらしく今は順平にくっつきながらグスグスと泣いていた。
「なんで、最後あんな怖い顔、映したのか分かんない…。」
「でも怖がらせないとホラーにならないから」
順平は苦笑しながら名前にそう言う。
「そうだけどぉ…。」と小さく呟きながらクッションに顔を埋める名前を見て中々見ることのない珍しい姿に名前本人には悪いが少しだけ可愛いと思った。
「(名前ねぇは弱い所見せてくれないからなぁ)」
いつも自分に見せてくれるのは頼れるお姉さんという名前らしい一面ばかりで。
でも、順平は思う。そんな所だけじゃなく、弱い一面も見せてほしい、と。
だからこそ、こうして怖がる名前の側にいれることが嬉しいのだ。
順平はそっと名前の頭を撫でると微笑んで「今度は怖くない映画見ようね。」と言う。
その言葉に名前は小さく頷いた。

さて、次はあまり怖くない…アニマル系でも見ようか?なんて考えながら順平は名前が落ち着くまで優しく頭を撫でていた。



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