▼甘い、あまい(嘉納扇)

「名前ちゃん!!」
「………何だ、嘉納」
嘉納に声をかけられて名前はため息をつきそうになりつつ、嘉納の方を見る。
すると嘉納はニコニコとしながら「休憩しよーよ!俺、疲れちゃった」と言う。
それを聞いた名前は今度は「はぁぁぁぁ」と大きくため息をついた。
「そんなため息つかないでよ〜」
「これがため息をつかずにいられるか…。」
そう呟いて頭を抱える名前を横目に嘉納は持ってきたのかはたまた置いてあったのか分からないがドーナツの箱を開けるとモグモグとドーナツを食べ始める。
それを見て名前はもう勝手にしてくれと思いながらパソコンに実験結果を打ち込む。
暫くの間、部屋の中にはカタカタとキーボードを叩く音だけが響いていた。
が、数分すると「名前ちゃん」と嘉納の声が聞こえた。
名前はキーボードを打つ手を止めると「何だ?」と嘉納の方を振り向く。
すると、突然口に何かが突っ込まれる。
「もがっ!?」
驚いて椅子から落ちそうになるのを何とか耐え、口の中に入れられたものを確認する。
口の中に広がる甘さと触感。
「…ドーナツか?」
「正解〜!」
名前の言葉に嘉納はニコニコしてそう言った。
「名前ちゃん眉間に皺寄せて怖い顔してるから俺のドーナツ特別にあげちゃう」
「……。」
「あっ、お礼なら今度甘いもの頂戴!ケーキとかドーナツね!」
そう言ったかと思えば嘉納はそのまま部屋を出て行く。
一方残された名前と、言うと。
そのまま机に突っ伏したかと思えば小さな声で
「…すっごい甘い」と呟いた。
その声は部屋の中に静かに消えた。



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