▼無茶しないで(阿藤春樹)

時系列は旧研究棟探索時

「危ない!」
名前の声が聞こえた瞬間、阿藤が見たのは
自分を庇うようにして立つ名前と榎本の操る人形の姿だった。

「……阿藤?」
「………。」
「……。」
幸いな事にクリーチャーの攻撃をギリギリでかわすことができた名前はそのまま阿藤に引っ張られるようにして比較的安全な部屋へ逃げることに成功できた……のだが。
「(これは、やばい……。)」
先程から阿藤が一言も話さないのだ、それも少し怖い顔をして。
「(もしかしなくても怒ってるよな…うん)」
名前の頬を冷や汗が伝う。
とはいえ、あの時はああする以外方法が思い浮かばなかったのだ。
もし、あの時自分が庇っていなければ阿藤が人形の攻撃を受けていた。
そうなってしまったら、逃げることが困難になるわ、怪我を手当てするものなんてないわで八方塞がりだ。
まぁギリギリで攻撃をかわせたのは怪我はしなかったのだ…それなら結果オーライだ。
と、そんな事を考えていると「名前さん」と阿藤が呼ぶ。
名前が阿藤の方を見ると、阿藤はじっと名前を見つめる。
そして数秒見つめた後、「もうああいうことしないでください」と言う。
その言葉に「へっ?」と言う声がでる名前。
ああいうこと…というのはやっぱりさっきの庇ったことだろうか?と考えていると
「貴方が傷ついてまで俺は守られたくありません」と阿藤は言った。
「でもあの時はああしないと…」
「…もし俺が同じことしたらどう思いますか?」
「うっ…。」
阿藤の言葉に何も言えなくなる。
もし、阿藤が同じ事をしたら自分はきっとなんでと聞いてしまうと思ったから。
傷つく姿を見たくないから。
「…ごめん、次からは気を付ける」
名前が謝ると阿藤は小さく微笑んで「分かってくれたなら良かったです」と言う。
そしてスッと立ち上がると「あの人形に見つからないうちに探索しましょう」と言った。
名前は頷くと「あとは榎本本人と宇津木にもな」と付け足して立ち上がる。
「そうですね…。俺もそれだけは遠慮願いたいです」
「だな…よし、行こう。」
「えぇ」
そう言うと二人は静かにその部屋から出ていった。



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