▼その細腕が抱き締めた(リリカ)

小説タイトルは約三十の嘘様よりお借りしております

※プレイヤー=夢主♀
今回の話はバトル時の煽りなどが出ます
苦手な方はバックしてください


普段はリリカしか使わない名前だが、ミッション消化の時は達成の為に苦手な他ヒーローを使うのだが今回のミッションはその中でも特に苦手なロールであるアタッカーミッションだった。
ガンナーメインで使ってる名前にとってアタッカーミッションはあまり嬉しくないものであった。
とは言うものの、ミッションを変更したとしてもまたいつかアタッカーミッションに合うのは確実な訳で。
そう思うと、苦手なロールから逃げても仕方ないと思った名前は
「(苦手だけど、これもミッション達成の為に、あと練習のために!)」
そう気を引き締めて向かったフリーバトル。
最初の試合ではそこそこいい立ち回りが出来たと少しだけ嬉しくなったのだが、次の試合でそれは起こった。
原因は自身の判断ミスで自陣ポータルキーが取られた事だった。
慌てて、敵を倒し取り返そうとした時。
『アタッカー』
そのチャットを送られた瞬間、名前は嫌な予感がした。
その予感は不幸な事に的中し、味方の一人から『アタッカー』などのロール名以外にも様々なチャットを送り続けられたのだ。
何とかポータルキーを取り返そうとしてもその味方はチャットを送るだけでリスポーン地から動くこともしない。
味方のもう一人がチャットで呼びかけても『おつかれちゃーん』と送るだけ。
……結局、このバトルでは勝つことができず終わってしまった。
まだミッション#は終わっていなかったが名前は次のバトルに行く気になれず、そのまま自分の部屋に戻った。
フラフラとした足取りで歩いていた為途中で会ったコクリコに「大丈夫?」と声をかけられたが名前は「大丈夫だよ」と笑って誤魔化すしかできなかった。

自分の部屋に戻った名前はそのままベットに飛び込む。
思い出してしまうのは、どうしたって先程のバトルと向けられたチャットの事。
「(……確かに、あの時取られたのは、僕が悪いよ)」
あの時の判断ミスは何よりも大きい失敗である事は自分が一番分かっている。
だから、だから分かっているのに、追い打ちをかけるかのようなあのチャット。
あのチャットを送った味方にとって、名前のミスは許せなかったのだろう。
だから、何度もロール名指しでチャットを送り続けたのかもしれない。
だから、勝てる見込みのない試合を捨ててリスポーン地から動くこともしなかったのかもしれない。
…そんな相手の気持ちなんてこれっぽっちも理解する気もできる気もしないが。
「……頑張ったのになぁ」
ポツリと呟いた小さな言葉、それと同時に名前の瞳からツゥーと涙が零れてシーツに小さなシミを作る。
一体、あの時自分はどうすればよかったのだろうか?
自分なりにキーを取り返そうとしたのに、それを嘲笑うかのように送られ続けたチャットと悪意。
それら全てが名前の心を少しずつ蝕み始めていた。

その時、コンコンと小さく扉をノックする音が聞こえた。
誰だろうと思っていると「名前ちゃん、今大丈夫かな?」と言うリリカの声が聞こえた
それを聞いた瞬間、名前は慌てて涙を拭いベッドから起き上がると「うん!今開けるから待ってて!」と言って”いつもと”変わらない笑顔を浮かべてドアを開けた。
「リリカちゃん、どうしたの?」
「あっ、えっとね……。コクリコちゃんが名前ちゃんが元気ないって落ち込んでたから…気になっちゃって」
そう言って微笑むリリカに名前は嬉しいと思うと同時に申し訳なく思った。
こうして、リリカやコクリコに心配をかけるなんて、なんて自分は面倒なプレイヤーなんだろう……と。
だから名前はリリカを安心させようと「元気ないなんて、そんなこと無いよ?ほらこんなに元気だよ!」と笑って大袈裟に明るく振る舞う。
リリカはそんな名前を見ると、一瞬顔を曇らせる。
そして「名前ちゃん」とジッと名前を見つめる。
「何?リリカちゃん」と名前が言った時だった。
「嘘ついたら、駄目だよ」とリリカが言ったかと思えば、ぎゅっと暖かい感触が名前を包む。
「リリカ…ちゃん?」
「あのね、名前ちゃん。無理して笑わなくていいんだよ」
そう言うリリカの声はとても優しくて。
その声を、温もりを感じた瞬間…名前の瞳からボロボロと涙が零れた。
そして涙を零しながら自分の思いをリリカに吐き出す。
「ぼく、ミッションで、アタッカー、頑張ろうって…おもったの!」
「うん」
「それなの、に失敗しちゃって、そしたら味方が、おこっちゃって…!」
「辛かったよね…名前ちゃん」
「僕…それでも頑張ったのに…!!それなの、に…!」
そんな名前を抱きしめながらリリカは優しくその背中を摩る。
まるで子供をあやす母親のように

…しばらくすると落ち着いたのか名前は涙を拭うと「リリカちゃん…ありがとう」と言う。
それを聞いたリリカは「お礼なんていいんだよ、リリカがしたかったんだから!」と笑う。
その言葉と笑顔に名前は自分の心が救われたような気がした。
「名前ちゃん、この後一緒にアップルパイ食べよ!さっき作っておいたんだよ」
「…うん!僕、リリカちゃんのアップルパイ大好きだから嬉しい…!」
「えへへ、そう言ってもらえると作った甲斐があるなぁ…。」
そんな事を話しながら二人は部屋を出て行くとキッチンへと向かう。
いつものアップルパイも今日はいつもよりおいしくなるかもね、なんて話しながら。


…名前の中にあった黒い感情はいつの間にか消えていた。





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