▼可愛くなりたかったのに@(13)

※夢主=プレイヤー

名前は密かに悩んでいた。
それは思い人である13の事だ。
『まといにのほ、それにジャンヌ……。
ここは可愛い子が多いよなー』
と言った言葉に名前は胸がズキッと痛くなった。
確かにまとい、のほ、ジャンヌの三人に加えてここにいる女子ヒーローは可愛い子や美人な人が多いと思う。
13の口からそのヒーロー達のことを聞く度に「(私なんて、その中に入ってないんだろうなぁ)」といつも実感させられる。
平々凡々な容姿。どこかが綺麗だとか可愛いとかそんな特徴なんてない。
そんな自分の容姿が嫌で、嫌で
それでも彼に『可愛い』って言ってほしい。
少しでもいいからこっちを見てほしい。
だから、名前は決めたのだ。
女子ヒーロー達には敵わないけれど。
少しでも可愛い女の子になれるようにと
頑張っていこうとそんな強い決心を胸に。
どういう風に可愛くなろうかと考えながら。
滅多に見ることのないファッション雑誌とティーン雑誌を手に取ると
名前は一枚一枚集中して読み始めた。

「おーい、相棒ーいないのか?」
コンコンとドアをノックするも中から返事は返ってこない。
いつもならすぐに返事をするはずなのに。
一体どうしたんだろうと思いながらドアノブを回してみる。
……するとガチャッと音がしてドアが開く。
少し隙間から覗いてみればそこにはソファーに座って何かを読んでいる名前の姿があった。
「(なんか集中してるみてーだなぁ…。)」
集中してるなら邪魔するわけにもいかないか…と思うのが他のヒーロー達だが。
13の場合は
「(ちょっと驚かしてみるか)」と思うのだった。

足音を立てないように部屋の中に入ると
ゆっくり、ゆっくりと名前の背後に近づく。
そして、もう距離が近いと言う所で名前の持っている雑誌に手を伸ばすと「なーにしてんだよ」とその雑誌を取る。
名前は突然雑誌が消えたことと13がいる事に「!!!??」と困惑しつつも13の持っている雑誌を見ると「返して!」と手を伸ばす。
その様子に13はニヤリと笑うと
「そーんな、必死になるなんて何読んでんだ?」と雑誌を見る……。そして固まった。
名前と言うと雑誌を見られた恥ずかしさからか顔を赤くすると「返して!」と言って雑誌を取り返す。
「(もう、最悪……!)」
まさか13に見られるとは、こんな事なら鍵掛けておけばよかった……!
そんな後悔を名前がしていると
ふと、13が「可愛くなりてーの?」とそんな事を聞いてくる。
名前は一瞬迷ったが、コクリと頷くと「うん」と言った。
すると、13はそんな名前に
「無理だろ」と鋭い言葉を言ってきた。
「こんな雑誌に載ってる女の子みたいになれるのか?俺は無理だと思うね」
「なっ、で」
「……背伸びしたって意味ねーだろ」
「大体、どういう風の吹き回しだよ。
こんな雑誌見るなんて、相棒そんなキャラしてたか?」
その言葉を聞いた瞬間、名前の中でガラガラと何かが壊れる音がした。

気づけば持っていた雑誌を13にぶつけていた。
「っで……。」
そして、それに追い打ちをかけるように
名前は近くにあったクッションを13に投げつけると涙をこぼしながら「出てって!!」と叫んだ。
まるで子供のように泣き叫ぶ名前。
その様子に13は、ハッとする
「(俺、今何を言った……?)」
13が今放った言葉は可愛くなりたいと思う彼女の心を深く抉ったのだと、気付いたときにはもう遅かった。
何かを言おうにも名前は泣き叫びながら近くにあるものを投げつけてくる。
「相棒」と呼ぶ声は彼女の声にかき消されてしまう。
こうなったら、彼女に近づいて声をかけるしかない。
と、その時だった。
「ちょっと!一体何事!?」という声と同時にドアの開く音がした。
騒ぎを聞きつけて来たのか、マルコスが部屋に入ってきて…そして部屋の惨状を見て息を呑んだ。
「えっ、なにこれ……二人共どうしたの!?」
その言葉に13が何かを言おうとした時だった。
「嫌い……13なんて、大嫌い…!!!」
と言う声が部屋に響いたかと思えばそのまま名前は部屋を飛び出す。
「名前ちゃん!」とマルコスが呼ぶがそのまま名前は行ってしまう。
部屋にはマルコスと13の二人だけが残った。
「ねぇ、13さん。何があったの…?」
「………俺は、馬鹿だよ」
「えっ?」
13の呟きにマルコスは首を傾げるが
13はそれを気にすることはせず、自身の顔を覆うとまた呟いた。
「……好きな奴を泣かせた、大馬鹿野郎だよ」
その言葉にマルコスは、何も言えないまま
ただ、13の姿を見ることしかできなかった。




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